<痔瘻物語>

pressココロ上




いよいよ先週からの続きで「痔」のお話です。先週の最後は「シャワートイレの功罪」で終わったのですが、今週はその「罪」について書くことになります。僕の話を書く前に、肛門と聞いて真っ先に思い出す話があります。それは先日終了しましたテレビ番組「タモリ倶楽部」でタモリさんが自慢げに話していたことです。そのタモリさんの話がやけに記憶に残っていますので紹介したいと思います。

タモリさんがお尻を拭いていくときのトイレットペーパーに残る「拭きあと」を解説していました。タモリさんは、「便を拭いていくとトイレットペーパーにつく量が段々と少なくなり、最後は筋状になり、それが数度続いて最後になにもあとがつかなくなってやっと終わらせる」と楽しそうに話していました。当時はまだシャワートイレが普及する前の時代でしたが、そのお話がなぜか頭に刻み込まれて離れません。

さて、僕のお話です。
一昨年の夏前のことですが、肛門に少しばかり違和感を持つようになりました。違和感とは前にも経験があります「拭いても拭いても便あとが続く症状」です。4年前の投稿「オロナイン」で書いていますが、その際は自分で「いぼ痔」があることを視認しています。実は、そのときの投稿では結論までは書いていないのですが、市販の「痔専用」の薬を塗り、完治かどうかは自分ではわかりませんが、一応治った感覚を持っていました。

ですので、その後は「痔」を感じることもありませんでしたので、数年ぶりの「肛門の違和感」ということになります。曲がりなりにも市販薬で「痔」を治した成功体験がありましたので今回も同じ対処をすることにしました。市販薬とはもう代名詞のようになっていますので隠す必要もないでしょうが、「ボラギノール」です。僕は成功体験よろしくボラギノールを就寝前に毎夜塗ることにしました。

ところが、4年前と違い症状が改善しないのです。そこでネットでいろいろと情報を集めますと「ボラギノール」には2つの種類があることがわかりました。2つの違いは「ステロイド」を含んでいるかどうかです。ステロイドを含んでいるほうが効果が強いらしいのですが、ステロイドの使い過ぎは「身体によくない」とほかのサイトで説明がなされていました。

僕が使っているボラギノールを確かめますと、ステロイドを含んでいないほうでしたので、当然のごとく効果が強いほうも購入しました。使用しながらしばらく様子をみていたのですが、悲しいことは効果は芳しいものではありませんでした。その時点で違和感を持ちはじめてから1ヵ月ほど経っていましたので、少しばかり焦る気持ちも出てきていました。排便時に出血があることと痛みも感じるようになっていたからです。

そこでまたまた市販薬を調べていきますと、塗り薬ではなく「痔の飲み薬」があることを知りました。身体の内部から痔を治すらしいので早速購入しました。この薬は朝と晩の2回飲むのですが、正直なところ症状が改善しているのか自分でも判断がつきません。しかし、ほかに対処法がありませんでしたので塗り薬よりも価格が高かったのですが、結局2ヵ月ほど服用を続けました。しかし、残念なことに効果を感じることはできせんでした。

あれだけ有名なボラギノールも効果がなく、飲み薬でもこれといった改善をしないのではさすがに悩みます。なにかヒントはないか、と市販薬の企業サイトに書いてある文章を隅から隅まで読んだりもしました。しかし、わかったことは「市販薬では完治しない」ということだけでした。

ああ、とうとうオイラ、肛門を赤の他人に見せなければいけないのか…。いくらお医者さまとはいえ赤の他人です。赤の他人に肛門を見せるなんて、、、悲しい…。ですが、病院に行かなければいつまでも肛門に苦しい思いをさせることになります。

心が決まるとあとは病院の検索です。病院というか医師の選択はとても重要です。僕は年をとってから心臓の病気から気管支喘息、皮膚疾病、嗅覚障害と様々な病院通いをしていますのでお医者さんの選択の重要性を痛感しています。世の中には間違いなくよい医師とそうでない医師がいます。もちろん技量もそうですが、同時に人格も選ぶ際には重要です。診察て嫌な気分になどなりたくないですし、そもそも嫌な気分になっては治るものも治らなくなってしまいます。

どこの病院にしようかとネットで調べますと、「肛門科」を掲げている医院が意外に少ないことがわかりました。通える範囲に絞りますと2つしかありません。繰り返しますが、大切なのはお医者さんの人間性です。もちろん病院のサイト情報だけでお医者さんの人間性を判断するのは無理があります。そうではありますが、僕の大切な恥ずかしい部分を見せるお医者さんです。できるだけ人間的に素晴らしいお医者さんを選びたいものです。

「僕の肛門をどっちに見せようかなぁ」と両病院のサイトを丁寧に細かいところまで見ていきますと、やはり感じるものはあります。距離的には少しばかり遠いほうの病院のお医者さんの「自分も痔瘻の経験がある」という文章に目が止まりました。どんな分野でもそうですが、体験者のほうが相手の気持ちを真に理解できます。

かなり前ですが、体験がいかに重要であるかを思わせるニュースに接したことがあります。日本弁護士連合会の副会長まで務めた方ですが、その方は副会長を退いたあとにある事件の逆恨みで奥様を殺害されたそうです。その方が語っていました。「自分は弁護士を長年務めてきたが、本当の意味で被害者の気持ちをわかっていなかった。自分がその立場になって初めて理解できた」と。その方はそれをきっかけに「全国犯罪被害者の会」を創設しています。

僕も自分のラーメン店の開業体験から「体験の重要性」を実感していました。「的外れなわかったようなことを言う未経験者」のなんと多いことよ、いつも思っていました。そうしたこともあり、僕は「痔瘻の体験者」と自己紹介をしていたお医者さんに診てもらうことに決めました。

車で30分ほどのその病院は個人医院にしては大きめで待合室も広く、診察室以外に透析用なのかわかりませんがベッドが幾つか並んでいる部屋もあり、看護師さんも少なくとも7~8人はいる規模の病院でした。

僕がそこを選んで正解だと思ったのは、待合室での受付のやり方でした。患者さんが受ける診察科目が「肛門科」とほかの患者さんにわからせないような工夫がなされていたのです。やはり体験者のお医者さんは違います。患者さんが感じる恥ずかしさを理解しているからこその対応です。

さて、僕の順番になり看護師さんに呼ばれ診察室に入りますとサイトに載っていた先生が座っていました。僕の問診票にひととおり目を通しますと「それでは、診てみましょう」と奥のベッドに促しました。ベッドの近くには慣れた感じの看護師さんが待っていて、僕にベッドに横たわる姿勢とズボンと下着の脱ぎ方を説明してくれました。実は、僕が一番心配していたのは肛門を診察されるときの姿勢というか体勢です。

仮に、四つん這いにさせられ顔だけベッドに押し付け、ケツだけ、いや違ったお尻だけを高く上げる格好はなんとしても避けたい体勢です。想像しただけで、恥ずかしさが増大してくる体勢です。

ベッドに腰かけた僕に看護師さんは「ズボンと下着を降ろして、横向きに寝て上になる足を前に出してください」と説明しました。

「よかったぁ」。

僕が想像していたあの無様な恰好はしなくてよかったのです。うれしかったです。それにその看護師さんが、人生の酸いも甘いも経験したであろう中年の看護師さんだったことも幸運でした。万が一にでも、若くてきれいな女性の看護師さんにケツの穴、いや違ったお尻の穴を見せるのでは、やはり恥ずかしさが段違いです。

僕の症状を診察した先生は僕にこう言いました。

「かなり悪い状態で、病名は裂肛(切れ痔)といぼ痔と痔瘻ですね。痔瘻は手術することになると思いますが、とりあえず飲み薬と塗り薬で様子をみましょう」

「え、手術?」。僕は手術だけはしたくないと思っていただけに先生の言葉はとてもショックでした。実は、事前に自分の症状について調べていたのですが、「痔瘻」の可能性も否定できないでいました。そして、痔瘻の手術をしたときは1ヵ月に1度の頻度で手直しの手術を約1年続ける必要があるようでした。簡単に言いますと1ヵ月に1度の頻度で手術をしなければいけないのです。

痔瘻の手術はとりあえず先に延ばし、先に裂肛の治療をする方針を伝えられ、1ヵ月に1度通院し症状を見て処方箋をもらうことになりました。そうして通院していた3回目の診察のとき、先生が肛門を見ながらおっしゃいました。

「とてもよくなっています。これなら手術しなくても済むかもしれませんねぇ」

通院を始めてから半年後、1ヵ月に1度の通院が1ヵ月半に伸び、その治療方法で続けていた1年と1ヵ月過ぎた今年の1月、なんと完治を迎えることができたのです。正確には、僕のほうから治療の終了をお願いしたのですが、その理由は昨年の11月頃から出血も痛みも全く感じていなかったからです。つまり、なんの症状も悪くないのに薬の服用を続けていたことになります。

1ヵ月半に1度の頻度とはいえ、やはり通院するのは面倒でした。ですので、思い切って先生にお願いしたのですが、先生は間髪入れることなく「いいですよ。また、症状が出たら来てください」と快く了承してくれました。結局、僕は手術をせずに痔瘻が治ったことになるのですが、これは珍しいことではないか、と思っています。よかった、よかった。

こうして僕の「痔瘻物語」は終わったのですが、「たろう」は出てきませんでした。

じゃ、また。




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