<勝ち組の論理>

pressココロ上




「歴史は勝者によって作られる」と言われますが、確かに、敗者はいなくなってしまいますので歴史を残すことはできません。ですので、「歴史は勝者によって作られる」には説得力がありますが、僕からしますと、そうであるからこそ「勝者はできるだけ公平・中立視点で事実を残す義務がある」と思っています。後世の人たちが正しい判断をするには、偏っていない中立的な視点で見た事実が必要だからです。そしてもう一つ勝者には義務があると思っています。それは、あとに続く人たちのために「公平な社会を構築する」義務です。

僕はラーメン店を廃業したあとの数年間、読書に明け暮れた日々があります。基本的には身体を動かすのが好きなタイプでしたので学生時代は読書とは無縁でした。しかし、独立をしますと、いろいろな場面で知識が必要になってきます。そのときに自分の無知さ加減を痛感したのですが、如何せん、ラーメン店を営んでいますと一日中お店に立っていますので読書をする時間を持つことは不可能でした。ですので、ラーメン店廃業後は時間の許す限り読書に時間を費やしていました。

そうした中で印象に残っているのが「漫画家の自伝」です。漫画家という職業に就く人は普通の人とは少しばかり異なった人生を送っていることが多く、その生きざまが脱サラをする人とか起業家といった独立心旺盛な人と共通しているように感じました。もちろん、同じ出版業界である作家になる人にもそうした共通点が見えますが、漫画家には「絵を描く」という一般の人にはない特殊な才能を必要とする点が違うところです。

うまいかどうかは別にして文章は誰でも書くことができますが、「絵を描く」という作業は誰にでもできることではありません。その意味において漫画家は特別な職業です。そうした理由で漫画家の自伝に興味を持ったのですが、中には衝撃的な自伝がいくつかありました。例えば、内田春菊さんの「ファザーファッカー」です。

今でこそ子供の頃の性的虐待についてニュース等で目にすることがありますが、30年前に「ファザーファッカー」という本で告発しています。僕がこの本を知ったのはずっと後ですが、同じような体験を綴っているほかの漫画家もいました。それ以外にも普通の人では経験しないような人生を送っている人が多いことが、漫画家の共通点のように思っていました。

僕は50歳から5年間コロッケ店を営んだのですが、そのときに定期的に買いにきてくれていた青年は漫画家の卵でした。アルバイトをしながら修業をしていたのですが、確か近畿地方が地元で、週刊誌のコンテストで佳作を受賞したのをきっかけに上京したそうです。著名な漫画家のアシスタントもやっていたようですが、マクドナルドでバイトをしている姿も見ていました。しかし、いつしか来店することもなくなり、マクドナルドでも見かけなくなりました。「もしかしたら、地元に帰るかも…」と話していたことを思い出しました。

僕が漫画家の自伝を読んでいたのは今から20年くらい前ですが、その本の中にはもちろん売れる前のことも書いてあります。その本を読みますと修行中の漫画家の生活ぶりがわかるのですが、当時は出版社がある程度生活の面倒を見ていたようです。アシスタントの仕事を紹介することもそうですし、さらに一歩踏み込んで幾ばくかの生活費を与えていたこともあったようです。しかし、現在の出版社にはそうした余裕はないはずで、漫画家の卵が自ら生活の糧を見つける必要があるようです。

先日、ある成功している漫画家のエッセイを読みました。その方はどちらかと言いますと、仕事に厳しい方のようで、それこそまだ成功に至る前の「修行中」の方からしますと辛辣と感じてしまいそうな言葉が連ねられていることが多々あります。

端的に言ってしまいますと、「うまくいかないのは努力が足りないから」「考えが甘いから」ということですが、その方の人生軌跡からしますと、そのように感じてしまうのも致し方ない面もありそうです。ですが、僕には「成功したのは、自分の努力の賜物」という「勝ち組の論理」と感じる部分があります。

一例を挙げますと、どんなに作品を書いても編集者からOKをもらい掲載が決まるまで報酬が発生しないことです。このシステムを乗り越えて勝ち組になった漫画家からしますと、それが当然のように思うかもしれません。ですが、業界外にいます僕から見ますとあまりに不公平です。断然に編集者・出版社が有利なシステムになっています。あまりに漫画家の立場が弱いのですが、勝ち組からしますとそうしたシステムがあるおかげで競争相手が減ることになります。堅い表現をしますと既得権益です。既得権益者が権益を手放したくないのは言うまでもありません。

僕はフランチャイズシステム(以下FC)に批判的ですが、それはあまりに本部が有利な契約になっているからです。個人事業主としながら自分で営業日・休業日を決めることもできず、反対に休業したときに違約金まで取られるこのシステムのどこに「個人事業主の自由」があるでしょう。「名ばかり個人事業主」でしかありませんが、それを受け入れている加盟店があるのも事実です。

たまにコンビニFCの加盟店が本部を訴えているニュースを見ることがありますが、大手マスコミではあまり報じられません。大口のスポンサーということもありそうですが、それ以外に、相対的には本部を訴える加盟店よりも本部の指示に従っている加盟店のほうが多いことも理由かもしれません。僕からしますと不公平な契約と思いますので不思議なのですが、文句を言わずに本部に従っているお店のほうが多いのが実態です。そこで僕は思います。もしかしたなら契約に従っている加盟店主の心には「勝ち組の論理」が潜んでいるのかも…。

本部に文句を言っている加盟店は「加盟店主の努力が足りず、勉強が足りない」という「勝ち組の論理」です。また、本部がそのような心理にすべくマインドコントロールをしている可能性もあります。新興宗教が信者を獲得するのと似ているかもしれません。しかし、本当に健全なFCにしたいのであれば、一部ではなく多くの加盟店主が現在の不公平な契約を見直すように行動を起こすことが必要です。これからコンビニ業界に参入してくる若い人たちが不利な契約にならないようにするために行動することが「先輩の」、そして「勝ち組の」義務です。

年末にNHKでは歴史を検証するドキュメントを放送していました。それで知ったのですが、女性の参政権が認められてから、まだ歴史が浅いことは驚きでした。それまでは男性のみが投票権を持っており女性にはなかったのです。現在ではだれでも18歳以上になりますと、男女区別なく選挙権が与えられますが、それは天から降ってきた権利ではないのです。

社会的に不利な女性の権利を向上させようと努力してきた先人の方々の行動があったからこその女性参政権でした。勝ち組になるということは既得権益者側に入ることです。もし、既得権益者が既得権益にすがるばかりで「あとに続く人たちのために公平な社会を築こう」と行動しないなら、いつまで経っても公平な社会は実現しません。敗者を「努力が足りない人」と切り捨てるのではなく、敗けた人でも普通に生きていけるような社会にすることが「勝ち組」には求められます。

「百獣の王ライオンは我が子を谷底に投げ落とし、這い上がってくる者のみ育てる」と言いますが、みんながライオンではないのですから。

じゃ、また。




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