<権力>

pressココロ上




あまり注目を集めませんでしたが、ファミリーマート(以下ファミマ)が社長の交代を発表しました。2016年に社長に就任した澤田貴司氏から伊藤忠商事の役員であった細見研介氏に交代しました。昨年、ファミマは伊藤忠商事の子会社に正式になりましたので、その流れからしますと当然のように見えます。しかし、僕の中ではコンビニ業界における大きな転換期と感じています。

僕は自分の経験から、フランチャイズシステム(以下 FC)に疑問を感じていますが、その典型がコンビニ業界です。本部と加盟店の関係が「歪」です。「歪」という表現が過激過ぎるなら「不公平」です。そもそも論になりますが、コンビニ業界は日本の小売業の中でもトップの業界に成長していますが、その理由は本部と加盟店の「不公平な関係」になっているからです。

企業が利益を出す際に最も重要な要素は人件費です。どのような企業にしろ働いてくれる人がいなければ活動できないわけですから、人件費は必須の要因です。その人件費を本部が持つのではなく加盟店に押し付けているのです。利益が出ないほうがおかしいです。

人を雇用するのは大変です。法律的にも様々な縛りがありますし、一人前にするまでにも研修などいろいろな費用が発生します。もちろん人間関係の構築など、それ以外にもたくさんの問題が山積しています。そうした問題を加盟店に押し付けているのがコンビニ業界のFCです。

しかし、なんと言っても一番の「不公平」は、営業の権限が加盟店に与えられていないことです。自分で仕入れ先を決めることもできず、自分の意志でお店を休むこともできません。もし、勝手にお店を休んでしまうと、違約金まで取られてしまいます。これでどうして独立した個人事業主と言えるでしょう。

こうした事例でおわかりのように、「不公平」の根源にあるのは加盟店が「個人事業主」という立場になっていることです。つまり、本部からしますと加盟店は取引先の一つという関係です。そうした関係でありながら、営業に関する細々とした点においては契約によって縛られています。「不公平」の極みです。

もちろん、社会的にも大きな存在ですから、本部は加盟店との契約に際して、そうした説明をしているはずです。テレビなどマスコミでCMを放映している企業が詐欺師のような対応をしているわけがありません。しかし、加盟店に応募する人たちは、ほとんどが素人です。契約については元より業界についてもなにも知りません。仮に、幾つかの不利な点を説明されたとしても、きちんと理解できない人がいても不思議ではありません。

コロナ禍で社会が混乱していますので、記憶の彼方に飛んで行っている人も多いでしょうが、一昨年大阪のセブン加盟店が勝手にお店を休業して、マスコミに大きく報道されたことがありました。この騒動が契機となり、コンビニ業界の24時間営業が見直されることとなりましたが、「不公平な関係」について報道されることはほとんどなくなりました。

先日、この加盟店主さんの記事がネットに出ていましたが、現在はコンビニを廃業させられ、知り合いのところで働いているそうです。裁判は続いているそうですが、社会が混乱していますので、マスコミもそれどころではないようです。

一時は本部と加盟店の「不公平な関係」に注目が集まりましたが、結局元の木阿弥に戻った印象です。どんなことも問題を修正するのは並大抵ではありません。実は、そのコンビニ業界の根源的な問題を解消するような努力をしていたのが、冒頭で書きましたファミマの澤田社長でした。澤田氏が社長に就任した当初は、その経歴の面白さからマスコミは澤田氏のいろいろな経営手法などを伝えることも多くありました。

澤田氏が社長に就任してから最初に行ったことは、自らが店舗に赴き研修を体験したことです。澤田氏のモットーは現場重視でした。その現場を知るために社長自らが店舗運営を体験したのでした。その心意気に僕はいたく感動し期待したのですが、業績的には結果に結びついていませんでした。

そうした最中の社長交代発表だったのです。しかし、こうした流れは想像できなくもありませんでした。その理由は、昨年伊藤忠商事がファミマを子会社化したからです。伊藤忠商事には岡藤氏というカリスマ経営者がいるのですが、その社長の辣腕ぶりは業界で有名でした。

僕からしますと、今の伊藤忠商事の岡藤独裁状況は、正常には映りませんが、厳然たる力を持っていることはわかります。なにしろ、ファミマどころか、親会社本体の伊藤忠商事の社長さえも交代させたのですから、力の大きさわかろうというものです。岡藤氏はかなりどころか、絶対的に結果を重んじる考え方の持ち主です。その岡藤氏からしますと、現在のファミマの澤田社長のやり方は生ぬるく思えて当然です。

そうした経緯がありましたので、今回の澤田社長の交代は予想できてはいたのですが、残念でなりません。コンビニ業界の健全化を果たせるのは澤田社長と思っていただけに無念で仕方ありません。

実は、コンビニ業界の健全化に取り組んだ、というか取り組もうとした人物が前にもいました。現在はサントリーで社長を務めている新浪 剛史氏です。新浪氏は三菱商事からローソンに出向してきた方でしたが、就任当初は24時間体制の見直しなども検討していました。結局、実現しませんでしたが、それだけコンビ業界の営業業態を変えるのは難しいということの表れだと思います。

新浪氏で実現できなかったコンビニ業界の根源的な問題を解消してくれそうな澤田氏だったのです。昨年コンビニ業界では、本部のスーパーバイザーが加盟店の了解を得ずに勝手に発注をしていた事件がありました。理由は、自分の成績を上げるためですが、勝手に発注するということは、加盟店からお金を盗むのと同じです。簡単に言いますと、泥棒をしていたことになります。

澤田社長は、こうした業界の問題点を解消するためにいろいろと対策を取っていた最中の交代でした。さぞや悔しいのではないでしょうか。交代会見では、新社長と笑顔で応じていましたが、心中穏やかではなかったはずです。

今回澤田社長が交代に追い込まれてしまったのは、「力」がなかったからです。なんの「力」かと言いますと、「資本の力」です。もし、澤田社長がファミマという企業のオーナーの立場だったなら交代などされることもありませんでした。現在、ファミマは伊藤忠商事に買収され資本の論理でオーナーは伊藤忠商事であり、そこの実力者である岡藤氏が権力を持っています。

岡藤氏は会長という役職に就き権力を持っていますので、自らは退くことなく部下である社長を交代させたりしています。権力さえ持っていたならどんなことでも可能です。企業に限りません。政治の世界でも権力を持った者が政治の世界、つまり世の中を動かすことができます。安倍前首相は首相の座を降りた瞬間に権力を失ってしまいました。「桜を見る会」で特捜部の聴取を受けたのも権力がなくなったから、と言えそうです。

権力はトップの人間が持っているとは限りません。かつて闇将軍と言われた田中角栄氏は弱小派閥の領袖を首相に仕立てながら政界をコントロールしていました。権力は地位によって決まるものではありません。実力で決まります。実力とは子分や弟子の人数であり、お金です。

皆さん、権力を持てるようになりましょう。ただし、人間性が備わっていないと、地獄に落ちる確率が高くなりますので、それ相応の覚悟が必要です。

じゃ、また。







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする