<マイルドヤンキーと木綿のハンカチーフ>

pressココロ上




先週は「頭のいい人」が集うチャンネル「トマホークTomahawk」について書きました。「仲間が増えていく様」にとても好感していたからですが、その中で格闘家の朝倉未来選手についても少しばかり書きました。朝倉選手については、不良少年が成功していく過程が魅力的に映っていたからですが、実は朝倉選手は「仲間が増えていく様」という点においても「トマホークTomahawk」に通じるものがあります。

先週、僕は「仲間が増えていく様」について、「ドラゴンボールを彷彿させる」と書きました。ですが、「ドラゴンボールを彷彿させる」という点でいうならば、「トマホークTomahawk」よりも朝倉選手のほうがふさわしいかもしれません。なにしろ朝倉選手は現実の世界で開かれていた「アウトサイダー」という格闘大会でのし上がっていったからです。その姿は「天下一武道会」で勝ち進む悟空と重なります。

その朝倉選手が先週行われた試合でKO負けを喫し、休養宣言をしていました。その試合については、「やすひろ」さんという方がnote(https://note.com/sports_wr/n/n1da0ba05bd27で)で丁寧に分析をしていますが、功成り名遂げた朝倉選手は格闘家として、一つの節目の時期に来ているように感じます。

僕が朝倉選手について初めて書いたのは2年前なのですが、なにかのyoutubeを見ているときにたまたま朝倉さんの「ぼったくりバーに潜入する」動画に出会いました。当然、潜入ですので映像はなく声だけのやりとりだったのですが、少し飲んだだけで数十万円のお会計を請求されたあとの、お店の男性と朝倉さんのやりとりはものすごく緊張感がありました。繰り返しますが、映像はなく声のみのやりとりでしたが、その緊迫感に引き込まれました。

とてもではありませんが、僕のような小心者には絶対にできない芸当です。おそらくほとんどの人が僕と同じような心境になると思いますので、それをやってのけている朝倉さんに感動する人がたくさんいたのでしょう。記憶が定かではありませんが、僕が観た時点で再生回数は数百万を超えていたように思います。それを観て以降、僕は朝倉さんのチャンネルを定期的に観るようになりました。

朝倉さんはチャンネルでいろいろな企画を行っていますが、僕が好んで観ていたのは「自分の生い立ち」について友人と語る動画です。企画では、地元で不良と言われている青少年たちとスパーリングをやったり、いわゆるドッキリなどもありましたが、そうしたものより、朝倉選手自らの生い立ちのほうに興味を持ちました。

このように朝倉さんのチャンネルはいろいろな企画を行っているのですが、朝倉さん自らが撮影をしているわけではありません。例えば、撮影者かもしくは第三者が朝倉さんに話しかけそれに答える形で動画が作られているわけですが、これはつまり、朝倉さんのほかに動画を制作する人がいることになります。見方を変えるなら、朝倉さんは主演、もしくはメインキャスターという立ち位置です。

このような表現をしますと、マネージャーや事務所の言いなりになっているアイドルのように思えますが、決してそうではありません。朝倉さんの考えるやり方で制作されていますので、操り人形ではありません。例えていうなら、ダウンタウンのハマちゃんのような立ち位置でしょうか。ハマちゃんの番組で一番偉い人は、制作側ではなくハマちゃん本人ですが、朝倉さんのチャンネルも同じです。

今回の試合で朝倉さんが負けたことで、いろいろな声が聞こえてきました。例えば、かつて「立ち技の格闘技大会 K1」で優勝した経験もある魔裟斗さんや朝倉さんを見出した師匠格にあたる前田日明さんなどが自らの考えを表明しています。両者とも批判とまでは言いませんが、諫めるような表現で話していました。ですが、僕はそうした指摘は「少しばかり違っている」と思っています。

以前朝倉さんは魔裟斗さんと動画で対談していますが、魔裟斗さんは朝倉さんに「もっと練習を積んだほうよい」とアドバイスをしていました。魔裟斗さんの素敵なところは、決して上から目線ではなく、相手に寄り添うようにアドバイスをすることですが、その際は朝倉さんも神妙に聞いていました。

ですが、今回の敗戦とは関係なく、僕は朝倉さんが目指している先は、格闘家である魔裟斗さんや前田さんとは違う景色を見ているように感じています。前に書いたことがありますが、朝倉さんの動画で一番印象に残っているのは、相手が誰かは忘れてしまいましたが、年齢が上で格闘関連のゲストとの対談です。もう既にyoutuberとして成功している朝倉さんにその方が尋ねました。

「この先、どうしようと思ってるの?」
「う~ん、別に決まってないんですよね。ただ、仲間と楽しくやっていければ…」

魔裟斗さんや前田さんは朝倉さんの将来の姿を格闘家として見ているようですが、僕には「朝倉さん自身は違う自分の姿を見ている」ように思えて仕方ありません。こういう言い方はアレですが、学歴もなく少年院上りの青年が今の成功に至っているのは、天性で持っている「発想の素晴らしさ」があるからです。そして、それは経営者の道に通じるものと思っています。実際に今の肩書の一つは「BREAKING DOWN代表取締役社長」です。代表取締役社長ですよ! すでに立派な経営者です。

前田さんがyoutubeで「(朝倉)未来は友だちのこととか、いろいろなものを背負い過ぎている」と話していましたが、この言葉には朝倉さんの収入が友だちなどスタッフの生活を支えていることを含んでいるようです。つまり、朝倉さんが先輩との対談で話していた「仲間と楽しくやっていければ…」を実行していることになります。朝倉さんと戦ったいろいろな人たちが朝倉さんに集まっていくのも自然の流れのように感じます。まさに、悟空そのものです。

今から10年ほど前、博報堂の原田曜平さんという方が「マイルドヤンキー」という概念を提言しました。「ヤンキー」は強面で暴力的なイメージですが、それを「マイルド」にしたのですから、そこまで「ワル」ではないことになります。つまり、「マイルドヤンキー」とは「やさしいワル」です。しかし、朝倉さんの動画を見ていますと、世の中の「ヤンキー」はみんな、「マイルドヤンキー」なのではないか、と思うようになりました。

基本的に「マイルドヤンキー」とは経済的な意味合いで使われるのですが、要は地元で働き、結婚し、子供を持って生活をする人たちです。意識高い系の人たちは都会や世界に出て、出世して華やかな生活を目指します。しかし、「マイルドヤンキー」は正反対の人たちです。地方ではよく「過疎化」が問題になりますが、過疎化を防いでくれているのがマイルドヤンキーの方々といえそうで、そうした意味でとても社会に貢献していることになります。

僕は朝倉さんを見ていて「マイルドヤンキー」を連想していました。地元にこそ残っていませんが、仲間と楽しく暮らすという意味では「マイルドヤンキー」の発想に合致すると思っています。実際、仲の良い友だちは地元でビジネスを展開していて、「未来のおかげ」と口にしています。

最後に、タイトルに「木綿のハンカチーフ」をつけた理由を書きます。太田裕美さんのヒット曲「木綿のハンカチーフ」は田舎にいる女性が都会に出た青年を思う気持ちを歌った楽曲ですが、青年は月日が流れるうちに段々と田舎のことを忘れていきます。それに対して、朝倉さんはいつまでも自分の中高時代の友だちを大切にしています。歌詞の青年とは正反対ですが、いつまでも初心を大切にしている姿から「木綿のハンカチーフ」を連想した次第です。

出世を求めたり、世界で活躍することを目指すのもいいですが、地元を大切にすることも立派な生き方です。もし、世界中の人が地元を大切にする心を持つなら、ガザやウクライナのような紛争はおきないでしょう。地元から外に向かって攻める必要がないのですから。

いや、地元を大切にしたいがゆえに、外に攻め出ることもあるか…。

難しい…。

じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする