<マウントをとりたがる人々>

pressココロ上




僕は車で移動する際にラジオを聞いているのですが、これまで書いていますように、TBSラジオしか聞いていません。ですので、普段「ジェーン・スー 生活は踊る」や「たまむずび」などを聞いています。以前は午前中は伊集院光さんの番組をやっていたのですが、なにかしらトラブルがあったようで、伊集院さんが降板し現在はパンサーの向井 慧さんがパーソナリティを務めています。

正直に言いますと、

…という書きだしではじめますと違うことで書きたいことが出てきました。

マスコミで批判されましたのでご存じの方も多いでしょうが、自民党の福田達夫総務会長の発言です。記者会見で「自民党議員と旧統一教会の関係」について、「正直に言います」と前置きを話してから「なにが問題なのかわからない」と話していました。

あとから弁明のコメントを発表していますので、おそらく「口がすべった」のだと思いますが、それまでの真摯なイメージが落ちたのは間違いありません。福田さんがまだマスコミなどで名前を取り上げられる前、小泉進次郎さんと対談している本を本を見たことがあります。その頃は清潔感があり、一般の人との感覚もそれほどズレていない感じがしていましたが、先ほ会見ではかなり離れてしまった感があります。記者会見での「なにが問題なのかわからない」発言は、今後の政治家としての活動に影響するのはないでしょうか。

僕が言うまでもありませんが、自民党の議員と旧統一教会が関係を持っていることの一番の「問題」は、旧統一教会が霊感商法などでトラブルを起こしていたことです。霊感商法は単純に言いますと、犯罪です。そうしたことが取りざたされている宗教団体に選挙のサポートを頼み、見返りに講演するのは、その宗教団体を宣伝していることと同じです。そのあたりの感覚が福田総務会長にはわからないようです。

「正直に言いますと」に戻ります。

僕はパンサーの向井さんよりも伊集院さんのほうが聞き甲斐がありました。向井さんに代わってからもしばらくは聞いていたのですが、魅力を感じませんでした。それだけ伊集院さんの存在が大きかったことになりますが、その伊集院さんを手放したのですから、TBSラジオはなにかを間違えているように思えて仕方ありません。

しかし、うれしい変更もありました。それは夕方の番組です。3~4年前に番組編成が変わったのですが、以前は荒川強啓さんがパーソナリティを務めていたニュース関連番組が「アクション」というバラエティ番組に変わっていました。その番組が元のニュース関連番組に戻ったのです。荒川さんに代わってパーソナリティを務めているのは荻上チキさんという方ですが、立ち位置がリベラルで僕にとってとても参考になるニュース番組です。

荻上さんは、TBSテレビ・日曜朝の番組「サンデーモーニング」にもたまに出演していましたので名前だけは知っていましたが、いろいろな方面に深い知見を持っているジャーナリストという程度のことしか知りませんでした。ネットの肩書では「評論家、編集者」などとなっていましたが、ラジオのパーソナリティとしていろいろな賞をとっているほどの有名な方だったことを、夕方の番組をきっかけにして初めて知りました。

荻上さんは弱者にやさしく強者にひるまず意見する尊敬できる方なのですが、一つだけ気になっていることがあります。それは番組内のラジオショッピングのコーナーに出演していないことです。もし、広告・宣伝することに抵抗がある、もしくはジャーナリストとしてのプライドが理由であるなら、荻上さんは本当の意味で世の中を見ていることにはなりません。

広告なり宣伝なりをすることは、見方を変えるならスポンサーや消費者に媚を売ることでもあります。「媚を売る」が言い過ぎであるなら、頭を下げることです。ショッピングコーナーに出演するということは、まさにスポンサーや消費者に頭を下げることです。そして、世の中のほとんどの人たちは、自らの生活のためにいろいろな場面で幾度も頭を下げて生きています。それが自らの信条とは違うことがあったとしても、生きるために我慢して頭を下げています。

もし、荻上さんがショッピングコーナーに出演しない理由が「プライド」にあるなら、荻上さんさんは考えを改めるべきです。「人に頭を下げる」経験をしてこそ、本当に弱者の気持ちに寄り添えることになります。

パンサー・向井さんの番組のあとにはじまるのは「ジェーン・スー 踊る生活」という番組ですが、この番組の人気コーナーは「人生相談」です。スーさんが「真面目な相談からトホホな相談にまで」的確に回答しているのですが、世の中に「人生相談コーナー」のなんと多いことよ、と僕はいつも思っています。

新聞、雑誌、ラジオなど様々なメディアのコンテンツとして「相談コーナー」があります。人間というのは「他人の相談」が好きなようで、以前本屋さんで100年前の人生相談を集めた文庫本を見たことがありますが、はるか昔から「人生相談」が人気だったことに驚かされました。そういえば、昔からゴシップ記事は世間の人気の的だったそうですから、人間の本質は全く変わっていないことがわかります。

「人生相談」で最近最も印象に残っているのは、ネット上での「人生相談への回答」が炎上した騒動です。あるサイトでは著名な写真家さんの回答が人気だったのですが、ある日の「相談内容」に対して「相談がニセモノである」と断定したことで大炎上し、その炎上が収まった矢先に、再度「不適切な回答」だとして炎上し、結局、その相談コーナーはなくなってしまいました。さらに、そのサイトまでもが今月で閉鎖することが決まっています。

著名な写真家さんの人生相談コーナーがなくなったのは炎上したことがきっかけですが、直接的な理由は人気がなくなったことです。先ほどラジオ番組が元のニュース番組に戻った話を紹介しましたが、「元に戻る」ということは新しくはじまった番組が終了することを意味します。言わずもがなですが、終了するのも人気が落ちたからです。いわゆる聴取率が落ちたからですが、実は終了したバラエティ番組にも人気コーナーがありました。そして終了に際して、実はその人気のあったコーナーのいくつかは独立した番組として時間帯を変えて残っています。

その一つに「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」という番組があるのですが、前に書いたことがありますので覚えている方もいるかもしれません。時間帯が夜に変わったので「radiko(ラジコ)」で聴いているのですが、前にも書きましたように「radiko」はとても便利です。ラジオには一過性という特性がありますので、一度聴き逃してしまいますとメディアに記録していない限り聴くことはできません。ラジオは楽しいですし、役に立つ情報もたくさんありますが、やはりわざわざメディアに記録するのは手間が面倒です。ですので、1週間という期限付きではありますが、定時放送以外の時間に聴けるのはとても便利です。

番組のタイトルについている「宮藤さん」とは脚本家であり俳優でもある宮藤官九郎さんですが、この番組は宮藤さんがいろいろな職業に就いている人から「仕事の愚痴」を聞く番組です。例えばコールセンターに勤めている人やクリーニング店で働いている人など、一般には知られていても、外からではわからない仕事の裏側にある苦しさ・辛さを聞いていきます。出演する人はいわゆる一般の人ですので、マイクに向かって話すのは難しい面もあるはずですが、宮藤さんの高度でありながら自然な話術で楽しい番組になっています。

先々週は「ソムリエ」の方だったのですが、最も印象的だったのが「マウントをとってくるお客さんが多い」という愚痴でした。「マウントをとる」とは知識をひけらかして上から目線で話してくることですが、僕から言わせるなら「お客だからこそできる芸当」です。出演していたソムリエさんも話していましたが、所詮は一般の人(素人)の知識はたかが知れています。それにもかかわらず、専門に勉強している人に向かって自らの知ったかぶりを披露して悦に入っているそうです。

本当に「お客」という立場だからこそできる芸当で、対等な立場であったならただ嫌われるだけです。もちろん後輩とか部下とか自分よりも立場が低い人にマウントをとることはできますが、当人のいないところでは間違いなく嫌われているでしょう。

僕もラーメン店時代に似たような経験をしたことがありますが、僕も表面上とは正反対に心の中では軽蔑していました。マウントをとりたがる人は相手が、もしくは周りの人たちが軽蔑しているがわからないようです。だからこそ、マウントをとろうとするのでしょう。おそらくマウントをとっている人は「自分が尊敬されている」と勘違いしているのだと思います。

正直にいいます。すべての接客業についている方々は、マウントをとりたがる人を心の中では軽蔑しています。

じゃ、また。




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