<にわか労災知識>

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おそらく社会人の方ですと、「労災」という言葉を一度や二度は耳にしたことはあると思います。ニュースなどでも報じられることがありますが、そうしたニュースで報じられる内容のほとんどは「労災適用の可否」について裁判で争われたときです。「労災」は仕事に従事しているときに肉体的または精神的に損害を被ったときに適用される保険ですが、損害を被ったときの状況によって「可否」が問題になることがあります。

仕事中であれば「労災」が適用されるのは誰が考えても当然ですが、問題になるのは通勤途中の事故です。本来は、通勤途中でも適用される労災保険ですが、寄り道などをしたときに問題になることがあります。そうしたときに裁判などで争われるのですが、労災が適用されるかどうかで労働者の生活や負担が大きく変わってきますので重要な問題です。

仕事中や通勤途中のケガは肉体的な損害ですが、例えば上司によるパワハラなどが原因で精神的に損害を被ったケースでも「労災の可否」が問題になることがあります。昭和の時代では問題にもならなかったケースでも、近年はパワハラとして「労災」が認められることもあります。精神的なことであろうとも、業務に起因されると判断されたなら立派な「労災」案件になり得る時代になっています。

このように、ニュースなどで「労災」に関連することを耳にすることはあっても、実際にどのような手続きをするのかはほとんどの人が知らないのではないでしょうか。かくいう僕も全く同様で「労災があるから、会社員は安心」程度の知識しかありませんでした。ところが、先日妻がパートの仕事に向かう途中に自転車で転び、救急車で運ばれる事態となり、労災の申請をする必要性に迫られることとなりました。

僕は仕事柄、朝7時半くらいから仕事をはじめているのですが、仕事をはじめてしばらくした時間にスマホに知らない番号から電話がかかってきました。朝早い時間の電話は不吉な予感がするものですが、案の定電話の相手は救急士の方でした。

「(妻の名前)さんが、自転車で事故に遭い、今救急車で〇〇病院に向かっています」

実は、僕は救急士さんから電話をもらうのはこれで3度目でした。1度目は子供が2才と3才の頃で、自転車で保育園に向かう途中に車にぶつかりそうになり転倒して親子ともども救急車で病院に運ばれました。2度目はラーメン店を営んでいる頃で二十数年前ですが、原付で駅まで向かう途中にスポーツカータイプの車にひかれたのでした。この事故についてはラーメン体験談でも書いていますが、足首が複雑骨折でかなりの重症でした。

そして、今回でしたので意外に落ち着いていられたのですが、朝早い時間に知らない番号から電話がかかってきた時点で、僕は「妻になにかあった」とある程度予想はしていました。

救急士さんとのやりとりで「意識もはっきりしていて、命にかかわるケガではない」ことを確認していました。救急士さんからの電話を切ってから、すぐに妻のスマホに電話をしますと、妻はすぐに電話にでました。

「自転車で転んで起き上がれなくなって、近くにいた人が救急車を呼んでくれた」

あとから知ったのですが、妻が僕からの電話を受けたときは救急車の中だったそうです。結局、命にかかわるほどのケガではなかったのですが、左腕の肩の関節近くの骨がポッキリと折れていました。たかが自転車で転んだだけで、そんな大事になることに驚かされました。

僕の当初の予想では、「骨にヒビが入る程度で1ヵ月くらい安静にしていれば治る」と思っていたのですが、現実は「骨をつなぎ合わせ、プレートで固定する手術」をしなければいけないほどの重症でした。医師の方に尋ねましたところ、全治2~3ヶ月という返答でした。

手術には入院する必要があったのですが、それほどの大手術でも入院日数は4泊5日という短い期間にも驚かされました。思い起こせば、以前、僕は心臓の手術をしたことがありますが、そのときもわずか3~4日の入院だったように記憶しています。今の時代の入院は短期間で終わらせるのが常識になっているようです。

それはともかく、妻は通勤途中でしたので「労災が適用される」とは思いましたが、実際にどのような手続きの流れになるのかが気になりました。妻が救急車で運ばれてから退院までの治療の流れを整理しますと、事故に遭った日は救急車で病院に担ぎ込まれたのですが、当日は一旦帰宅し、4日後に入院する手はずになっていました。救急車で運ばれた当日の治療費は健康保険証も持っていませんでしたので、全額自己負担で5万円ちょっとと高額でしたが、クレジットカードで支払いました。

帰宅してから、「労災」についていろいろと調べたのですが、とりあえずは病院に「労災」であることを伝える必要があることがわかりました。電話で問い合わせますと、病院の担当者の方から「16号の3という様式の用紙を出してください」と言われました。早速妻の勤務会社にその様式の用紙を取り寄せるようにお願いしたのですが、その段階ではまだそこから先の手続きが全くわかっていませんでした。

その後入院、手術と無事に終わったのですが、退院の際の支払いがなんと72万円です。このときも健康保険を使わなかったのですが、僕たちは「労災」で支払われると思っていたからです。ですが、病院に「労災」と伝えてはいても、その手続きについてはまだなにも行っていません。しかも「伝えた」と言っても、電話でのやり取りだけです。普通に考えて、そうした状況で「労災」が適用されるとは思えません。

そうは言いましても、支払いは72万円です。支払いの窓口に行きますと、一般の方とは違う窓口に案内されました。そこでも「労災」とは伝えましたが、「支払い誓約書」なるものにサインを求められました。あくまで想像ですが、病院側もさすがに72万円という高額な金額を徴収するのは気が引けたのかもしれません。実際はどうなのかわかりませんが、とりあえずはその場では支払わなくて済むこととなり安堵しました。

帰宅後に労災の具体的な手続きについて調べたのですが、まず考えたのは勤務先の上司に相談することでした。僕たちは「労災」の素人ですが、上司は僕たちよりは「労災」の手続きに関して場数を踏んでいると思ったからです。そこで、妻が上司に電話しますと、「一般の人よりは経験がありますから、一度来社して一緒に用紙に記入しましょう」と親切な言葉を言っていただきました。

これで一安心と思ったのですが、妻が上司の方からもらってきたのは、なんと「労災」ではなく健康保険の申請書でした。ここで、その上司の方が「労災」にあまり詳しくないことが判明しました。僕はすぐに上司の方に電話をかけて、「本社の労災に詳しい方に問い合わせてほしい」旨を伝えました。

現状はこの段階なのですが、この上司の例をみてもわかるように、ある程度労災の手続きの経験がある人でも、具体的な手続きについては詳しくは知らない方のほうが多いようです。こうした僕の経験から「どなたかの参考になれば」と、僕が調べた範囲で具体的な手続きの流れについて書きとめておくことにしました。しかし、専門家でもない素人の僕が調べた範囲の内容ですので「にわか」とつけた次第です。

ここまで書いたところで、今週分のページ数に近づいてきましたので、本日は労災の全体的な説明だけにとどめることとし、詳しい説明は来週とさせていただきます。

まず基本中の基本。
「労災」は仕事中や通勤途中に起きた出来事に起因したケガ・病気・障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度です。「労災」で補償されるのは「治療代」と「休業補償(簡単に言いますと、お給料)」です。

治療を受けるときに重要なことは、「健康保険証を使ってはいけない」ことです。妻の場合は、たまたま保険証を持っていなかったことが功を奏したのですが、「健康保険証は仕事中のケガには使ってはいけない」ことになっているようです。

「休業補償」は、通常もらっていたお給料の8割がもらえます。会社の上司の方も勘違いをしていたようですが、健康保険にも「傷病手当金」という似たような制度があります。ですが、なんども書くようですが、仕事中・通勤途中のケガでは健康保険を使ってはいけないことになっています。ちなみに、健康保険の「傷病手当金」はお給料の6割が給付されますが、労災保険の休業補償はお給料の8割が給付されます。

今週はここまでです。

じゃ、また。




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