<連続ドラマ>

pressココロ上




昨年末、注目を集めたドラマがありました。フジテレビで放映されていた「silent」という川口春奈さん、目黒蓮さん主演の恋愛ドラマで、リアルの視聴率はそれほどでもなかったようですが、あとから見ることができる配信動画サービスでの再生回数がこれまでの記録を抜いたそうです。

そのような話を知りますと俄然見たくなる性分ですが、放映時間に見ることができませんので、多くの人のように配信動画サービス「TVer」で見てみようと思いました。実はそれまで「TVer」は話には聞いたことがありますが。利用したことは一度もありませんでした。最近のドラマにはあまり興味を持てませんでしたので、「TVer」を見る機会がなかったこともありますが、なんとなく面倒という気分も無きにしも非ずでした。

しかし、「silent」がきっかけになり挑戦したのですが、なぜか「1話から3話」までしか見ることができませんでした。「ん?、なんでやろ」と思ったのですが、たまたまタイミングが悪くて「見られないのかなぁ」などと思い後日見ることにしました。ところが、いつまで経っても4回目以降が見らない状態が続いていました。

ご存じの方からしますと「こいつ、アホやなぁ」と思うかもしれませんが、僕は「視聴できるのが1週間」という期限があることを知らなかったのです。僕が「1話から3話」まで見られたのは、たまたま年末に特別なサービスをしていたからなのでした。

以前ラジオの配信サービス「radiko」の話を書いたことがありますが、「radiko」は放送されてから1週間という期限が決まっているのですが、「TVer」も同じだったのです。それを知りましたので、仕方なく「silent」を全話見ることをあきらめたのですが、不思議なもので、ある程度時間が過ぎますと「見たい」気分もそれほど起きなくなり、終いには消滅していました。

自分なりに気持ちの変遷を分析しますと、おそらく「年のせい」だろうと思います。やはりこれだけ年を重ねますと、「恋愛ドラマ」に対する興味は薄れてきます。たまたま「再生記録更新」というニュースに惹かれただけですので、こだわりもそれほど強くはなかったことが、あきらめられた要因です。

実は、「silent」に興味を持った理由は「再生記録」だけではありません。NHKの朝ドラ「舞い上がれ!」にちょうどその頃「silent」に出演していた目黒蓮さんが出演していたこともあります。主人公・福原遥さん演ずる岩倉舞の恋人役として登場していました。俳優としてとても魅力的でしたので、「silent」も見てみたくなったのでした。

「舞い上がれ!」は現在も時間のあるときに見ているのですが、このドラマを見ていて感心することがあります。それはストーリーの奥がとても深いことです。このドラマは話の展開が早いことが魅力の一つですが、その展開が早いので場面の移行も自ずと早くなります。例えば、幼少時のときは五島列島であり、それから成長し学生時代があり、新たな挑戦のパイロット養成学校があり、母をサポートすべく東大阪に戻り家業を手伝う、といったふうにいろいろなストーリーが展開しています。

それらを見ていて僕が感動するのは、展開は早いのですがそれぞれの場面において「ストーリーの奥が深い」ことです。例えば、五島列島の幼少時代は永作博美さん演ずる母の子育ての悩みを、養成学校時代はクラスメートとの「コミュニケーションの難しさ」を、東大阪に戻ってからは後に結婚することになる梅津貴司と編集者の関係を、特に最近僕が「こんなことまで描けるのか」と感動したのは、ストーリーの中心になっている「経営」に関してです。

養成学校時代の福原さんと目黒さんの男女の機微な恋愛感情あたりまでですと、ある程度手慣れた脚本家ですと書けると思います。ですが、梅津貴司と編集者のやり取りはかなり具体的で専門的で、その業界についてある程度の経験とか知見がなければ描けない込み入った内容です。また、経営に関する専門的な内容もそれなりの経済・経営の知見がなければ考えつけない内容になっています。そうした深い内容のことを「一人の脚本家で書けるのかなぁ」と不思議に思っていました。

あまりに違和感が強くなりましのでつい調べてみました。すると驚きの事実がありました。なんと! この朝ドラは脚本家が3人いて場面ごとに入れ替わっていることを知りました。これまでの常識でいいますと、脚本家は一人でそのドラマを完結させるはずですが、この番組のプロデューサーは最初から3人の脚本家を場面ごとに入れ替えていたのです。そうか! 僕はそのとき初めて合点しました。やはりそうでなければ、これだけ深い内容は思いつかないですし、描くことはできないと思います。

このように感動していたときに、たまたまネットの記事で長澤まさみさん主演の「エルピス」というドラマを知ることになりました。業界の評価は高かったらしいのですが、如何せん視聴率が低迷してそうです。しかも、時期はあの「silent」と同じ年末の3ヶ月間でした。当時、業界では「silent」の再生回数が注目を集めていましたので「エルピス」はほとんど話題に上ることもなかったようです。

しかし、ネットの記事で業界では評価が高いという評判を読んで見てみる気持ちになりました。しかも、調べてみますと「amazon prime」で配信しているではありませんか。僕は早速見ました。

結論を書きますと、「面白かった!」です。「面白かった!」と過去形にしましたが、実は昨日から見始めたばかりですのでエピソード3までしか見ていません。まだ途中までなのですが、それで十分面白さを感じました。それと同時に、なぜ一般的に評価されなかったのかも少しだけわかったような気がします。

内容的には、いわゆる硬派といわれるドラマで、政界やテレビ業界の裏側、権力者の横暴ぶりなど様々な問題点を描いています。しかもその描き方がかなりエグイ感じで、例えば現役大物政治家を思わせる風貌の人が出てきたり、テレビ業界の視聴率偏重主義や人事やバラエティ番組の問題点、女子アナの処遇など、世間一般の人が面白半分で興味を持ちそうなことを描いています。

これまで説明してきましたように政界やテレビ業界について描いていますが、ドラマの展開の軸になっているのは冤罪なのです。そこが僕が一気に引き込まれた要因なのですが、「ある死刑囚が実は冤罪」というテーマを軸に政界やテレビ業界、社会の不公平を描いています。僕のようなへんてこなオジサンが興味を持つネタが満載なドラマになっています。

そうなのですが、このドラマは視聴率が振るわなかったという現実があります。僕は面白いと思うのですが、一般の人には「重すぎる」のかもしれません。僕は映画の感想もこのサイトで書いていますが、先週は「アルゼンチンの独裁政治時代の国家の幹部を裁く」映画を観ました。

この映画はラジオで町山智浩さんが紹介していたので観る気になったのですが、内容的にはかなり重いものです。軍事独裁時代の虐殺や拷問を指示した国家の幹部を裁くものですので、決して楽しく観られる映画ではありません。それでも飽きることなく一気に最後まで観られたのは「重い内容をエンタメに仕上げていた」からです。

実は「重い内容をエンタメに仕上げていた」という言い方は町山さんの受け売りなのですが、重要なことはエンタメにしている点です。翻って、「エルピス」に欠けていたのは「エンタメ」だったのかなぁ、と思わなくもありません。

と書きつつ、まだ「エピソード3」までしか観ていませんが、よくよく考えてみますと「エンタメ性」はありますね。出演陣も豪華で長澤まさみさん主演ですし、相手役は眞栄田郷敦さんですが、眞栄田さんの魅力が十分発揮されています。以前眞栄田さんはNHKで純粋で純朴な寅さんのような主人公を演じていましたが、今回も天然が入った純朴性はとても似合っています。

そのほかに実力派・鈴木亮平さんなど名わき役を揃えているのを考えますと名作であるのがわかるようですが、それでも視聴率は低迷していました。こうなりますと、「う~ん、まぁ、そういうこともあるよな」と思う以外に方法はないように思います。

それでは、これから続きを見たいと思いますので今週はここまで。

じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする