<総裁選をながめながら…>

pressココロ上




先週、やはり最も僕の興味をひいたのは自民党の総裁選です。そして、結果を見たときの第一感想は「河野氏が思いのほか伸びなかった」ですが、投票前に言われていたほど河野氏の人気はなかったようです。下馬評では、「河野総裁の目」もありそうに喧伝されていましたが、蓋を開けてみれば岸田氏の圧勝でした。

自らの名前が読み上げられたときの岸田氏の天を仰ぐような仕草が印象的でした。本来なら1年前にその座に就いていてもおかしくなかったはずですが、権力闘争に負けたことで1年先送りになったことになります。そうした経緯があってのあの「天を仰ぐ」仕草だったように想像します。

僕は市井で暮らすただのオジサンで政治の世界にいたことも精通しているわけでもありません。ですので、これから書くことはマスコミ記事やネット記事などを読んで総合的に勝手に推測したものでしかありません。ですが、とにかく書きたくて書きたくて仕方ありませんので書かせていただきます。

今回、岸田氏が勝利を収められた一番の理由は、なんと言っても菅総理が不出馬を表明する前から、二階幹事長に対して挑戦する姿勢を見せていたことです。なにしろ幹事長職5年目に入っている二階氏に対して、「最長3年の任期を提言した」のですから、宣戦布告以外のなにものでもありません。

しかし、この時点ですでに安倍元首相や麻生財務相からの指名条件提示があった可能性もあります。1年前、本来なら岸田氏を後継にするつもりでいた安倍氏が、菅氏と二階氏の共闘により総裁選びで後塵を拝する結果となったことがしこりになっていたはずです。そうした過去があっただけに、今回の総裁選で安倍氏と麻生氏が早めに動いていた可能性は高いと思います。

そもそも菅首相が不出馬を決断した背景には、安倍麻生連合から「二階氏切り」を迫られたことがありそうです。菅氏は当初、二階幹事長の更迭を考えていたようですが、その二階氏から反発され動けなくなったという見方が常識的ではないでしょうか。こうした流れから今回の選挙結果をとらえるなら、「二階氏の敗北」とみることもできます。

話は少し逸れますが、二階氏で思い出すのは野党の要職を渡り歩いた細野豪志氏です。細野氏は野党を渡り歩いていたにもかかわらず、現在自民党に入党すべく動いていますが、その後ろ盾になったのが二階氏でした。普段から二階氏は「来るものは拒まず」という姿勢を見せていますが、そうすることで党内で確たる地位を獲得してきました。そうした二階氏を頼りにして細野氏は動いているのだと思いますが、その二階氏が党内で力を失いますと細野氏の政治家としての将来も危うくなってくるように思います。

それはさておき、今回の総裁選において河野さんにとって重要な局面は石破氏と共闘したことです。この決断はある意味、安倍麻生連合との決別ということになります。僕的にはその決断を支持していますが、この決断は大きな意味を持っていました。なにしろ安倍麻生連合は石破氏を毛嫌いしていましたから…。

河野氏とは反対に選挙途中から「安倍麻生連合寄り」の姿勢を鮮明にしたのが岸田氏でした。記者会見で「森友学園問題」や「桜を見る会問題」の再調査をしないと言明していましたが、立候補当初は再調査にもう少し前向きなニュアンスがありました。あきらかに安倍麻生連合を意識した変容でした。

ちなみに、「再調査」を表明していたのは3人の中で野田聖子氏ただひとりでしたが、野田氏の後見人が二階氏ということを考えるならむべなるかなといった思いがします。野田氏に関する感想を僕なりにいいますと、高市早苗氏への対抗心ではないかと思っています。立候補をしても勝つ見込みはまったくない中でわざわざ立候補したのですから、女同士の対抗心以外に理由が見当たりません。

ついでのちなみに…。
自民党内における女性の出世競争の先頭を走っているのは高市氏と野田市のほかに稲田朋美氏がいます。稲田氏は安倍氏の覚えめでたく、着々と階段を上り防衛大臣や幹事長代行まで務めていますが、いつの頃からか人権派政治家へ転身しています。元はガチガチの右寄りと言いますか保守派だった印象がありますが、現在は夫婦別姓を認めるような活動など保守派から距離を置くような活動をしています。これはつまり、党内の女性出世競争から脱落したことを意味します。

今回の総裁選は、当初は派閥が一致団結して投票する「縛り」ではなく、各議員が自らの意志で決める「自主投票」で行われるような報道がなされていました。そうした流れの中で若手のまとめ役として登場したのが福田達夫氏でした。福田氏は福田康夫氏を父に、福田赳夫氏を祖父に持つ政治家エリートですが、今回の総裁選に際して派閥横断の若手の団体の代表世話人に就いていました。この団体が「自主投票」を呼びかけていたのですが、次第にしぼんでいった感があります。実際、選挙の後半では派閥の締め付けが強まったことは選挙結果が示していますが、新総裁の下での福田氏の総務会長就任という結果をみますと、「とりこめられた」感はぬぐえません。

それに対して小泉進次郎氏は最後まで河野氏を支えるべく動いていました。その「信念やよし」という印象です。しばらくは冷や飯を食わされるのでしょうが、自らの信条信念を曲げない姿勢のほうが長い目でみるなら好結果をもたらすのではないでしょうか。

今回の結果で露わになったのは、河野氏が思いのほか議員の間では今一つ人気がないことです。議員が政界で生き残るためには、ときには「勝ち馬に乗る」という選択も必要です。そうしたことが決選投票での大差につながったと思っていますが、それを割り引いても河野氏の得票は少なかったと感じています。こうした状況を見る限り、自民党はまだまだ旧勢力に縛られており、改革をするのにはもう少し時間がかかりそうな感じがしています。

コラムで幾度も書いていますが、僕は自民党支持でも野党支持でもありません。ただただ公平で清廉な政治が運営されることを願っている者です。そんな僕からしますと、ここ10年弱の自民党政権は唯我独尊が過ぎたように思います。それが最も表れているのが「国会で平気で嘘をつく」ことがまかり通っていることです。そして、それに追従している官僚たちの姿です。

かつては、骨のある官僚が行き過ぎた政治や危険な政策に対しては「ノー」を突きつけることがありました。しかし、内閣人事局の設置によって「モノ言う」官僚がそれなりの役職に就くことができなくなってしまいました。政治家に尻尾を振る官僚ばかりが政権の周りに陣取っています。

こうした状況も政権交代が起きるなら修正されるはずです。たとえば、森友学園問題では官僚が政権に忖度をして公文書改ざんを行いました。「公文書改ざん」は言葉にするとわずか6文字ですが、実はとても大きな犯罪です。事実を捻じ曲げているのですから、これほど重大な罪はありません。

官僚の方々がこうしたことを起こしてしまうのも、「政権交代が起きない」と決めつけているからです。「公文書改ざん」は「政権交代が起きない」ことが前提です。もし、政権交代が起きるなら交代後の展開を考えて、官僚も簡単にはそのときどきの政権に忖度などしていられないはずです。なぜなら、政権が交代されることで犯罪があきらかになるからです。その意味において、政権交代は公平で清廉な政治が行われるためには絶対に必要なことです。

考えようによっては、野党にとっては河野さんよりも安倍麻生連合を背後に抱えた自民党のほうが戦いやすいともいえそうです。1ヵ月もしますと、衆議院選がありますが、一人一人が公平で清廉な政権が生まれるような選択をすることを願っています。そのためには、なんとしても投票率が上がらないと…。

じゃまた。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする