<職住隣接のリスク>

pressココロ上




僕の愛する妻は、、、本当です、、、現在スーパーに勤めているのですが、そこに決める前に家から歩いて1~2分のところにある会社に「応募しようかな」と考えていたことがあります。今から3~4年くらい前のことですが、それまで勤めていたスーパーの店舗が撤退することになり、ほかの職場を探していたときでした。家の近くですので、その会社の前を通ることも多く「募集」の文字が目に留まったのでした。

妻に「あそこ、どう思う?」と聞かれましたので、僕は「やめたほうがいいよ」とアドバイスしました。理由は自宅に近すぎることです。歩いてものの数分で通えるということは、なにかしらの理由で退職したあとにも、近所であるがゆえにその会社との関係性が途切れないことになるからです。

わかりやすく説明しますと、例えばなにかしらのトラブルで退社した場合に、退職したあとにもその会社の人たちと遭遇する可能性があることです。トラブルで退社したのですから、会社の人と会うのは気まずい気持ちになるはずです。近所ですと、その可能性がより高くなり、プライベートの時間が楽しめなくなってしまいます。あまりに近い職場は避けるのが無難です。

ラーメン体験記でも書いていますが、プライベート空間と仕事空間があまりに近いのは人生を生きるうえであまりよい環境ではありません。仕事にもいろいろな職種がありますが、顧客と直に接する業種の場合はなおさらです。例えば、ラーメン店などの場合、お客様とトラブルが生じますと、そのお客様がお店ではなくプライベート空間である自宅にも押しかけてくることが可能です。もちろん嫌がらせなども簡単にできます。これではせっかくの休業日でも心おきなく休むことができません。

それ以外にもリスクがあります。それはプライベートの過ごし方がお客様に筒抜けになることです。ときには悪影響を与えることもあります。例えば、休業日に近くのパチンコ店などに行った場合、お客様に見られる確率は高くなります。また、個人的な趣味の本などを購入した場合でも、そうしたことが周りの人たちに知れ渡る確率が高くなります。このように自らの生活全般の行動がお客様の人たちに筒抜けになってしまいますと、やはり息苦しさを感じずにはいられないでしょう。

ラーメン店時代、近くのお蕎麦屋さんは、まさに歩いて数分のところのマンションに住んでいたのですが、「お休みの日は、マンションの裏口から出かける」と話していました。また、そうした環境は好むと好まざるに関係なくお店の評判に直結します。そして言うまでもなく、業績に反映することにもなります。先々週、「有名税」というタイトルでコラムを書きましたが、周りから注目されるということは、まかり間違えますと人生を台無しにすることさえあります。

理想としては、本人を取り巻く周りの人たちが仕事中とプライベート中を区別して接してくれることですが、みんながみんなそのようなわけにはいきません。中には、仕事中とプライベートを一緒くたにするのが当然と考えている人もいます。お客様を相手にする職種に従事する人はそうしたリスクを念頭に入れて臨むことが必要です。

僕の娘は薬局チェーンでパートさんとして働いているのですが、先日興味深い話を聞きました。そのチェーンの店長さんは会社から業務用のスマホを持たされ、なんと休みの日にも対応することを義務付けられているそうです。僕からしますと、完璧に「ブラック」です。どうしてそのような会社で働いているのか不思議でなりません。ちょっと言い過ぎかもしれませんが…。

いえいえ、言い過ぎではありません。休みの日にも仕事をしなければいけないなんて、絶対にあってはいけないことです。この状況は「休みがない」ことと同じです。もし、マスコミから糾弾されたなら言い逃れできないでしょう。「管理職だから」という言い訳を考えていそうですが、今の時代は通用しないはずです。だからこそコンビニはフランチャイズというシステムを採用しているのです。

先日、大阪のコンビニオーナーさんの契約解除に関する裁判の判決が報じられましたが、オーナー側が敗訴しました。この裁判を簡単に説明しますと、一緒にお店を切り盛りしていた奥様がお亡くなりになったあと、オーナーが一人で「24時間を営業するのはきつい」ということで短時間営業を求めていたことを端緒とする訴訟です。このオーナーに限らず24時間営業はオーナーにとって精神的にも体力的にも厳しいのは容易に想像できます。バイトが見つからなかったり休んだりしたなら、オーナーがやらなければいけいのですから24時間働きっぱなしという状況になることもあります。

こうした働き方を雇用契約を結んだ従業員に押しつけるのは不可能です。ですから、コンビニ本部はフランチャイズシステムを採っています。それほど雇用関係というのは働く側を守る側面が強いのですが、それにもかかわらず、店長という管理職とはいえ社員に24時間中スマホを持たせて対応をさせるのは真っ当な企業ではありません。

ついでに言いますと、先日、牛丼チェーンの「すき家」で働いているパートさんが勤務時間中にお亡くなりになるという報道がありました。僕が驚いたのは、「すき家」がまだワンオペをやっていることでした。僕の記憶では、数年前にワンオペが原因で業務に支障をきたし、確か、記者会見まで行ったのではないでしょうか。それにもかかわらず、まだワンオペをやっていたとは何をかいわんやです。

話を戻しますと、職住隣接は「職」の部分が「住」に食い込んでくる確率が高くなりますのでおすすめできません。この場合の「職住」とは「職場」と「住居」のことで、言い換えますと「仕事」と「プライベート」です。繰り返しになりますが、「仕事」が「プライベート」にまで浸食してきますと、落ち着いてプライベートの時間を過ごすことができません。

これまでの説明では、「仕事」と「プライベート」が全く関連性のないケースを想定してきました。ですが、実は「仕事」と「プライベート」が関連しているケースもあります。例えば、自宅の玄関の一部が損傷したときに、修理を依頼するケースです。こうしたケースで、あまりに自宅に近い業者に依頼する場合は、まさに「職住隣接」ですが、近いがゆえに発生する問題があります。

仮に、納得できる修理をしてもらえなかった場合を考えてみましょう。近所付き合いの手前、面と向かって不満を口にすることができません。不満を我慢したとして、ほかの業者に同じ修理をしてもらうわけにもいきません。なにしろ近所なのですから、同じ個所を修理しているのを見たなら文句の一つも言ってくる可能性があります。同じ個所の修理をほかの業者に依頼することは、前にやってもらった修理業者に対してあからさまな嫌がらせになってしまいます。だからと言って、近所の業者に気安く「やり直し」などお願いできるものでもありません。

反対に、仕事を依頼された側でも問題が発生することがあります。それは、お金が絡んだ関係になってしまいますので、本来なら同等であるはずの人間関係が主従関係に変化することです。「自分はお客だ」という意識がどこかに芽生えますと、ついつい上から目線の接し方になることもあり得ます。そうした状況は、まさに「仕事」が「プライベート」に浸食した状態です。言うまでもなく、そうしたプライベートが楽しいはずがありません。

これまで説明してきましたように、顧客と直に接する職種では「職住隣接」はあまりよい環境とはいえません。たまに「通勤時間がかからない」というメリットばかりを説いている記事がありますが、デメリットも理解しておくことは必要です。特に、近所の人に仕事を依頼するのは、依頼する側も請け負う側も慎重であるべきです。

ちなみに、妻とは「食住隣接」ですが、うまくいっています。(^o^)

じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする