<テレビと動画>

pressココロ上




昨日の夜、テレビ東京のスポーツ番組を見ていたのですが、2010年頃に活躍していたスキーの選手が40才を迎えてから競技に復帰するようすを放映していました。名前だけはなんとなく記憶に残っていましたが、それ以上のことは覚えていない選手でした。しかし、当時はかなりな「ビッグマウス」ぶりと目立つ風貌と振る舞いでスポーツニュースを賑わせていた選手のようでした。

ワールドカップでは表彰台に上がったことも幾度かあるくらいの実力者だったそうですが、残念ながらオリンピックでは好成績を残せなかったそうです。しかし、全体的にはマスコミにも注目されていたスキー選手だったそうです。また、今回コラムに書くにあたり調べたところ、なんと女子レスリングの世界選手権で優勝経験もある山本美優選手の元夫という経歴にも驚かされました。

それはともかく、一度は現段を引退し世界の山々を滑るフリーライドスキーヤーとして活動していた佐々木選手が、オリンピックで滑る現役選手の映像に触発されて現役復帰を決断するようすが放映されていました。しかし、その映像のほとんどが、テレビ局が撮影したものではなく、自身がスマホで撮影している映像でした。つまりはyoutuberと変わらない映像だったのですが、見ている側としては下手にテレビ局の下請けの制作部門が撮っている映像よりも悪い印象を与えていませんでした。むしろ、純粋なスポーツ選手の気持ちが直に感じられるものでした。次回2026年の冬季オリンピックを目指して頑張る気持ちが伝わってきました。

佐々木選手の映像は自分のスマホで自らを撮影した動画だったのですが、こうした手法は昔なら考えられないことです。この映像はまさにドキュメンタリー作品といえるものです。昔ですと撮影をする人がいて編集する人がいて、同じ人がこなす場合もありますが、どちらにしてもそれなりに専門的な知識やスキルを持っている人しかできないことでした。それが、今の時代はいとも簡単に一般の人が誰でも簡単に作ることができます。なんという時代になったのでしょう。

今の若い人はあまりテレビを見ずに動画を見ているそうですが、オジ(ィ)さんの僕も似たような生活を送っています。今のテレビは本当につまりません。「つまりません」とは、印象に残らず「流れていってしまう」という意味合いも含んでいます(ウマい!座布団一枚)が、面白いと思える番組がほとんどないのが実情です。

テレビの視聴率が昔に比べて全体的に落ちているのはよく言われることですが、その理由としてあげられているのは「テレビを見る以外にやりたいことが増えたこと」と言われています。そして「増えたこと」の中には「メディア」も含まれています。さらに言うなら「チャンネルが増えた」こともあります。昔ですと、テレビしか見るものがありませんでしたので、選択肢が限られていましたが、今の時代は、ピンポイントで自分の好みに合った映像を見ることができます。無理にテレビで我慢する必要などありません。

もちろん、テレビ自体の魅力がなくなったことも視聴率低迷の要因ではあります。その理由を探っていきますと、そこには昔ながらの発想から抜け切れないテレビ局側にも要因があるように思えて仕方ありません。少しばかり刺激的な言い方をするなら「このくらいやっておけば、視聴者は喜ぶだろう」という視聴者を舐めたかのような作り方です。そうとしか思えない番組を妻は喜んで見ています。

僕の想像では、制作側つまりテレビ局の人間がそういう発想から抜け切れていないと思いますが、出演しているタレントの方々のほうがその「ズレ」を認識しているように思います。例えば、バラエティ番組内でMCを務めている芸人の方は、「台本には~~と書いてあるけど…」と裏話を暴露する場面がたまにあります。視聴者からすると「え、それにも台本があるの!」と思うような裏話を面白おかしく口にしています。

先日読んだ経済サイトには、有名な投資家の方が「テレビに出演したときの実態・裏話」を書いていました。投資家として名が知られてきたころに、テレビ局から出演依頼を受けたらしいのですが、番組ではすべて台本が決まっており、「自分の思いどおりに話をすることができなかった」そうです。

第三者からしますと、そのようなやり方ではその投資家を出演させる意味がないように思えますが、テレビ局からしますと「自分たちの考える番組内容にするため」の行動なのでしょう。こうした例はテレビに限らずラジオでも見聞きすることがあります。二人のパーソナリティが掛け合いで話しているときに、片方が「台本にはそういうふうに書いてないけど…」などと、番組の裏側を暴露する会話を聞くケースはよくあります。このように、一見自由にやり取りしているようで、実は裏ですべて仕切られている例は枚挙にいとまがないのですが、そうした発想が近年のテレビ離れにつながっているように思います。

僕が最近はまっているのは格闘技系の動画なのですが、特に「朝倉未来さん」のチャンネルが気に入っています。格闘技に関心のない方はあまりご存じないかもしれませんが、不良系の人たちの間では「カリスマ」になっている選手です。9月に「5階級を制覇した元ボクシング世界チャンピオン・メイウェザーさんと対戦する」選手と聞くと思い出す人もいるかもしれません。

僕が朝倉さんを知ったのは「ぼったくりバー潜入」の動画なのですが、おそらく僕と同じようにこの動画で朝倉ファンになった人は多いのではないでしょうか。それほど見応えがあり、迫力満点でした。とても面白かったので、ご存じのない方はこちらから。

朝倉選手はケンカで連勝とか、50対1でケンカとか、少年院に入っていたとか、若い人がハートを掴まれる経歴の持ち主なのですが、朝倉選手自身はそうした華麗な経歴をひけらかすでもなく、実に淡々と活動しています。そうした振る舞いも人気の秘密のように思っています。一つ前の世代で不良系の若者のカリスマと言いますと、キックボクシング系格闘技「K-1」で活躍した魔裟斗選手が思い浮かびます。

朝倉選手はその魔裟斗選手と食事をしている動画をアップするなど親しいのですが、魔裟斗選手が引退後も活動の場を選手関連(トレーナーとかコーチなど)にとどまっているのに対し、違う方向に向かっているように見えます。現在、朝倉選手は「BreakingDown」という格闘技大会のスペシャルアドバイザーを務めているのですが、そうした展開を見ていますと、単に格闘技の選手として進むのではなく、さらにその上のプロモーターのほうに活動の場を広げようとしているように感じます。

朝倉選手は人気が出たあと、いろいろなインタビューで「今後のことや将来について」質問されているのですが、その際に「別に…、仲間と仲良くやっていければ…」と確たる展望を持っているようではありませんでした。ですが、現在の活動ぶりを見ていますと、最初の頃の自然な思いを大事にしながらの新たな道が開けていっているように思います。

どんなに大人が工夫をしようが、いろいろな個性の集まりである教室という空間では周りとなじめない子供たちが生まれるのが現実です。本来はそうした子供たちの居場所も作ってあげるのが大人の役割・義務だと思いますが、うまくいっているとはいえません。これまではそういった子供たちが進む道というのは悪い方向に進むしか方法がなかったのですが、朝倉選手たちのチャンネルを見ていますと、「新たな受け皿になるのではないか」という期待を持たせてくれます。

今週はここまで。

つづきは来週。

じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする