<約束>

pressココロ上




今週の「日経ビジネス」はとても面白いです。第2特集の「タックスイーター」は読み応え抜群で す。こういう記事こそジャーナリズムの真骨頂だと思います。前に紹介しました本「ゴミにまみれて 」と対比しなが ら読むと理解しやすいのではないでしょうか。この記事を読みますと郵政民営化がいかに難しいか わかろうというものです。是非、立ち読みでもよいので読んでいただきたいと思います。それでは今 週の<ココロ>…。
<約束>
 JR西日本の事故から早や1ヶ月が過ぎました。何度もテレビに映し出されるJR西日本の社長の 姿を見ていますと大企業という組織のトップに立つ責任の重さを痛感させられます。自営業におけ るミスはほとんどが自分自身がすることです。しかし大企業のトップは自分が直接行ったミスではな くとも責任を取らなければなりません。現在ビジネスの世界に身を置いている方はみなさん当然と 日々実感しているのでしょうが、仕事の責任の厳しさを感じざるを得ません。
 マスコミ、特に週刊誌においてはJR西日本の勤務システムについて糾弾しています。例えば運 転手はオーバーランをしたならばボーナスが5万円カットされるなどと報道され、またミスをした者に 課せられる日勤教育が非人間的であると非難されています。そしてプレッシャーが運転手に悪影 響を与えているとも言われています。
 しかしプレッシャーのない仕事などあるのでしょうか。報道を見る限り、日勤教育については問題 点があるかもしれません。しかしだからと言ってプレッシャーがあることがいけないとは言えないと 思います。もしプレッシャーがない仕事があるとするなら、その仕事に対して対価を支払っている側 が大きな不利益を被っていることになります。
 例えば製造業者であるなら品質のよい製品を作らねばならない、というプレッシャーがあり、流通 業者であるならばお客様が満足するサービスを提供しなければならないというプレッシャーがあり ます。もしこれらのプレッシャーを失くす方向に社会が進むならその社会は退廃した社会となってし まいます。
 過密ダイヤも問題視されています。マスコミは日本を外国と比べ「日本では1分の遅れも許されな いのはおかしい」と言います。しかしダイヤが正確であることがどれほど社会に貢献しているでしょ う。仕事をしている人で正確なダイヤを不必要と考える人はいないと思います。仕事でなくともデー トの待ち合わせにしても相手を待たせてフラれることがなくなります。
 考えても見てください。携帯電話のない時代に、ずっと片思いだった女性とやっとの思いでデート の約束を取り付けたとします。そして待ちに待った当日、電車が遅れたために約束の時間に間に 合わなくて結果的にスッぽかしたことになって、結局「約束を守らない人は嫌い!」と言われた男の 気持ちがわかりますか! 友だちにそのことを話してもただただ「おまえも運のない奴だな」と笑わ れるだけの男の気持ちがわかりますか! 今から20年以上前にすでに「電車男」と呼ばれた男の 気持ちがわかりますか!
 約束。
 そう、世の中は全て約束によって成り立っているんだ、とそのとき思ったのでした。国民と国の約 束を明文化したものが法律で、経済上の需要側と供給側の約束が契約です(うん、そうに違いな い)。その重さに軽重はあってもあらゆることは約束をしているのです。一番軽い約束が小さい頃幼 馴染のヨッちゃんとした小指と小指を重ね合わせた約束です。
 JRの運転手が時間通りにダイヤを守るのは運転手と会社の約束です。その会社は乗客とダイ ヤが正確であることを約束しています。これは安全についても全く同様です。
 もし約束が間違っていると思うなら…。そのときは約束を変えればよいのです。
 先日、ニュースで元東京入出管理局長が「脱北者支援組織NPO]を設立したと報道されていまし た。組織という集団では必ずしも自分の思い通りの約束をすることはできません。それは組織とい う性質上仕方ありません。そういうときはこの元局長の方のように組織を離れて活動すればよいの です。今までに幾度か山内豊徳氏という元官僚を紹介したことがありますが今回の元局長の方も 気骨のある官僚であると思います。現状の法律では真の意味で脱北者を支援する約束はできな い、と現場の方が思い、そして真の意味で支援する約束をするためにNPOを設立したのですから 尊敬に値します。官僚の方は批判されることが多いですが素敵な人もいるという証拠になります。
 スローな社会。
 ニュース番組で特集されたこともありますが、「約束」自体をスローなものにすればよいという発想 の方もいます。でも私は賛成しかねます。「スローな社会」を目指す方々は「効率を求めすぎる」と 憂慮します。しかし「効率がよいこと」がどれだけ社会に貢献しているでしょう。仕事をしている人で 効率を求めずに目標を達成できる人はいません。仕事でなくとも親の介護を迫られている人にとっ て効率よく仕事をすることが介護を可能にします。またその介護にも効率を求めることがさらにより よい介護につながります。効率を求めることにより生ずる弊害があるとするならば効率を求めるこ とを捨てるのではなく生じる弊害を一つ一つ取り除くことを考えるべきです。もちろん効率的に…。
 そう言えば妻と結婚するとき約束したことがあったっけ…。あのとき確か「幸せにするから」って言 ったんだよな…。でも今、貧乏で苦労かけてるし…。でも僕約束を破ってるとは思ってないんだ。
 よかったぁ。あいまいな約束にしといて…。
                                           じゃ、また。




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