<ベテランの意義>

pressココロ上




僕は週に一度、妻とのドライブも兼ねて車で1時間ほどのショッピングモールやスーパー、リサイクル店などをめぐっています。そうしたときに、最近目につくのが「お米」「お水」の品薄もしくは売り切れの光景です。最初は理由がわからなかったのですが、ニュースなどを見ていてわかったのは「地震」など災害が関係していることでした。

こうした光景を見ていて思い出すのは50年前のオイルショックです。我先にとスーパーでトイレットペーパーを買い占める人が続出し、それがまた品薄になるという悪循環を招いていました。今回の米騒動、水騒動はそこまでひどくはありませんが、似たような状況になっています。「買いだめ」をする人がたくさんいることが商品の「品薄」や「売り切れ」の原因ですが、「買いだめ」をする人の心理が「自分さえよければいい」と考えているようであまり気持ちいいものではありません。オイルショックから50年経った今も人間はあまり進歩していないようです。

そんなことを思っていましたら、いきなり岸田首相が総裁選不出馬を表明しました。正直なところ、「わずか20%前後しかない支持率でいったいなにをしようというのか!」と憤りを感じていましたので、英断と思いました。僕のような第三者からしますと、「英断」ですが、本人にしてみますと「苦渋の決断」だったはずです。おそらく続投を模索したでしょうが、不可能と判断してのでしょう。

「自民党が変わることを国民に示す最もわかりやすい最初の一歩は、私が身を引くこと」という発言はとても好感でした。言い過ぎかもしれませんが、「ハト派宏池会の領袖を務めた岸田文雄の矜持」と感じました。そのような潔さを感じたのは、総裁候補に名乗りをあげた3年前以来でしょうか。あのときは当時党内で権勢を誇っていた二階幹事長に反旗を翻しての立候補表明だったように記憶しています。それまで大きな派閥の顔色をうかがいながら、自らの行動を決めているように映っていましたので、覚悟を決めたようで頼もしさを感じました。

岸田首相の表明を受けて総裁選は新しい展開に入りましたが、焦点になるのは「世代交代」です。マスコミでは11人の候補が取りざたされていますが、実質はもっと少ないはずで、11人も上げるのはマスコミの悪弊です。そんなことはあり得ません。

岸田首相と年代があまり変わらない人も名乗りを上げそうですが、その方々は岸田首相が「不出馬を決めた」理由を理解していないように思います。「自民党が変わる」ことをアピールするには世代交代しかありません。政治家ふうにいうなら「選挙に勝つ顔」にふさわしい人は最低でも50代です。「60代以上の方は資格がない」と僕は思うのですが、読者のみなさんはどうでしょう。

このように書きますと、僕が「ベテランは弊害のみ」と考えているように思うかもしれませんが、決してそうではありません。パリオリンピックでの男子バレーボールはイタリアをあと一歩のところまで追いつめながら、逆転負けを喫してしまいました。僕はリアルタイムでは見ていなかったのですが、ニュースで観た逆転敗けまでの経緯があまりに劇的でしたので試合経過の全体を確認したくなりました。

第1セット、第2セットと連取し、第3セットも「24対21」とマッチポイントまで行きながら、同様に、最終セットもマッチポイントをとりながらの大逆転負けでした。その映像を観て僕が真っ先に思い出したのは50年前の「ミュンヘンオリンピック」準決勝での男子バレーの大逆転試合でした。

このときは今大会とは反対に、日本チームが第1、第2をとられ、第3セットをとられたら敗退という状況でした。その不利な状況からの大逆転だったのですが、そのような危機な場面で試合の流れを変えるきっかけをつくったのはベテランの南選手でした。この試合については「ミュンヘンへの道」というタイトルで記事を書いていますので気になる方はご覧ください。

今回の試合で僕が一番確認したかったのは、イタリアが大逆転をはじめるターニングポイントでした。第3セットで日本チームにマッチポイントまで追い込まれながらの大逆転です。ミュンヘンオリンピックでの日本チームは「6対9」からの逆転でしたから、イタリアチームはもっと追いつめられた状況からの逆転でした。「誰が」「どうやって」を知りたくてたまらなくなりました。

ミュンヘンオリンピック時の日本の監督は松平康隆さんという方ですが、松平さんは世界に後塵を拝していた日本の男子バレーを世界の頂点に導いた立役者です。その松平さんは常々「バレーはリズムのスポーツ」と話していました。その言葉に倣うなら、日本がイタリアをマッチポイントまで追いつめながら逆転されたのは、どこかでイタリアチームに「リズムを崩された」からと僕は考えました。

第3セット「24対21」とあと1点をとるだけで日本が勝利できる場面で、その流れを変えたのはイタリアのベテラン選手でした。ちょうどこの頃、イタリアチームはチーム編成をベテランから若手へ変えた時期だったようです。選手の中心が20代の前半で、ベテランは数人しかいませんでした。若手の一番の長所は勢いがあることですが、短所は経験が足りず危機に瀕したときに浮足立つことです。

イタリアチームが追いつめられたとき、経験豊富なベテランは冷静に心乱れることなく、若手を引っ張っていました。名前は忘れてしまいましたが、そのベテランがサービスポイントをとり「24対22」としたのがターニングポイントだったように思います。松平さんが生きていたなら、僕と同じことを言っていたでしょう。…たぶん。

実は、日本チームの敗退を聞いたとき、僕はキャプテンである石川祐希選手の不調が敗因ではないか、と思いました。なかなか調子が上がらず前の試合では「途中で控えにまわることもあった」と聞いていたからです。ですので、試合の全部の映像を振り返ったのは、試合の流れを決めたターニングポイントを探すこととともに、石川選手の調子を見ることも目的としていました。

試合を飛ばし飛ばしながらも第1セットから順繰りにみたところ、イタリア戦に限るなら石川選手は不調ということはなく調子も戻っているようでした。その証拠に、この試合で最も点数をとっていたのは石川選手だったそうです。そうであるなら、余計に第3セットの窮地におけるイタリアのベテラン選手の奮闘が光ります。

ネットでは最終第5セット「15対14」と日本がマッチポイントをとったあとにサーブミスをした日本選手を批判する投稿があふれたそうですが、やはり僕が思うには「実力敗け」というのが実際のところではないでしょうか。今のチームになるまで、日本は世界に通用しない実力だったわけですから、一足飛びで頂点に行けるはずはありません。

日本はミュンヘンオリンピックでは金メダルを獲得しましたが、そこに至るまでにはその一つ前の大会で銀メダル、さらにその一つ前の大会で銅メダルと階段を一つずつ上って頂点にたどり着いた経緯があります。それを思うとき、世界から後れをとっていた日本男子バレーが世界に一歩ずつ近づいていることを今回のオリンピックで証明したことだけでも評価してよいのではないでしょうか。

ミュンヘンオリンピックでの日本チームの大逆転も今大会でのイタリアチームの大逆転も、つまるところは実力があってこその偉業です。チームに実力があったからこそ、ベテラン選手の経験が活かせたのです。そもそもチームに実力がなければベテラン選手の経験もなにもあったものではありません。

チームの実力を高めるためにベテランに求められることは、前に出すぎずここぞというときだけアドバイスを送ることです。

よろしくお願いいたします。自民党のベテランの方々。

じゃ、また。




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