<久しぶりにフランチャイズC>
先日、車を運転しているときに、たまたま赤信号で止まりました。何気なく歩道を見ますと、その奥にお蕎麦屋さんの入り口が見えました。近隣には一般の住宅が並んでいますので、その中に飲食店がありますと、やはり目立ちます。そのお店はいかにもお蕎麦屋さんといった風情で、入り口は曇りガラスの引き戸になっていて、その横にはガラスの商品ケースが設置されていました。その中には、これもまた昔のお店らしく、プラスチックで作られた食品サンプルが展示されていました。昔から見かける個人商店のお蕎麦屋さんの風景です。
引き戸を見ますと、戸の真ん中あたりに、30センチ×40センチほどの白い紙が貼ってあるのに気がつきました。注意深く見ますと、こう書いてありました。
「店内禁煙 現金払いのみ」。
最近はテレビCMでも見かけますが、個人商店でもキャッシュレス決済ができるようになってきています。これだけ世の中にキャッシュレス決済が広がっている現状では、個人商店といえどもキャッシュレス決済と無縁ではいられません。しかし、お店側がキャッシュレス決済を導入するには機器をそろえる必要がありますし、手数料も発生します。数字的には小さくとも、個人商店にとってはそれなりに負担になる金額です。
仮に手数料を3%とられるとして、月の売上げが100万円のお店では3万円の手数料となります。粗利が40万円として、その中から光熱費などの費用を支払い、さらに3万円の出費では、結構大きな負担です。ですので、キャッシュレス決済を導入していないお店も多いはずです。先ほどのお蕎麦屋さんもそうしたお店の一つなのでしょう。ですが、僕が気になったのは、戸の「真ん中の目立つところにデカデカと書いてあった」ことです。
これは昔ラーメン店を営んでいた僕からしますと、想像がつきます。お客様からのクレーム対策です。クレームというと大げさですが、支払う段になって「なんだ、やってないのかよ!」などと嫌みを言ってくるお客さんもいます。そうしたことに備えての貼り紙です。感じの悪い、嫌なお客さんには来てほしくないものです。商売の原則に照らしますと、そうしたわがままな対応はご法度でしょうが、お客さんを選ぶことができるのが、自分でお店を営んでいることのメリットです。
これがフランチャイズチェーン(以下:FC)となりますと、話は変わってきます。どんなお客様であろうとも、笑顔で寄り添う姿勢が求められます。すべて、本部の言われるがままにしなければいけません。こう書いてきて、最近はFCについて書いていないことに気がつきました。久しぶりなので、FCについて書こうかなと思います。もう知らない人も多いでしょうが、そもそも僕がこのコラムを書き始めたのは、20年以上前ですが「FCの問題点」がきっかけだったのです。
ここ10年で、僕が最も記憶しているFC関連のニュースは、6年前に大阪のセブンイレブンの加盟店がお店の休業日について本部と対立し、裁判を起こした事例です。奥様が体調を崩したことにより「24時間無休」という契約を守ることができなくなり、対立した事例でした。結局、3年後に加盟店が負けて決着したのですが、「個人が大企業と裁判で争っても勝てない」ということを証明しただけで終わった感があります。
僕は以前から書いていますが、営業日も営業時間も自分で決められない個人事業主などあり得ません。キャッシュレス決済に関しても同様です。キャッシュレス決済を導入するか否かを決められない個人事業主などあり得ません。ですので、コンビニの加盟店は個人事業主ではありません。それにもかかわらず「独立」という言葉を巧みに使い加盟店を募集するやり方に、僕は憤りを感じているのです。
以前、「公共料金の収納を行う際」の加盟店側の手数料は「ゼロ」という記事を読んだことがあります。ここで誤った情報を拡散するわけにはいきませんので注意深く書きますが、「ゼロ」はともかく、収納代行の手間だけを考えたなら赤字になっているのは間違いないように思います。「公共料金」の支払いが「集客のフック」になっていることはあるでしょうが、手間賃とのバランスは難しいものがあるはずです。年配の方が支払い用紙をたくさん持ってきて、支払いにそれなりの時間を要している光景を見ますと、「集客フック」だけでは済まないようにも思います。
あまり大きなニュースにはなりませんでしたが、今年の3月にあるファミリーマート店舗で「キャッシュレス決済は店舗手数料負担が極めて大きくなっております。現金かファミペイでのお支払いをお願いできれば幸いです」という貼り紙が注目を集めました。これを読みますと、キャッシュレス決済がいかに加盟店の負担になっているかがわかります。
ここから先は僕の勝手な想像ですが、こうした貼り紙を貼りだすオーナーの感覚も問題ですが、同時に加盟店を管理している本部のマネージャーにも問題があるように思いました。マネージャーが常識的で普通に働いている人であったなら、そうした貼り紙が貼り出される前に何かしら話し合いが行われたはずです。どちらにも問題があったというのが僕の感想です。
先日は、ある有名なラーメンチェーンの大量閉店が話題になっていました。この事例はちょっと込み入っているのですが、有名なラーメンチェーンの加盟店になっていた企業が、自ら本部を立ち上げたことが真相のようです。「加盟店になった『企業』」と書きましたが、加盟店になるのが個人とは限りません。企業が加盟店になるのはよくあるケースです。
昨年、ココイチのフランチャイズチェーン運営会社の社長に22歳の女性が就いたことが話題になりました。この運営会社はココイチの加盟店だったわけですが、二十数店舗を運営しているそうです。この運営会社で働く人は、れっきとした会社員ですので身分も安定しています。FCは本来こうした姿が理想形なのではないか、と個人的には思っています。
FC本部の厳しい契約内容を企業が受け止めて、その企業が従業員を雇用し運営する。この形態ですと、個人が無理難題を本部から押しつけられることはありません。大阪の加盟店のように「なにがなんでも働け」というようなことは起こりません。本部の無理難題な契約を運営会社が責任を負うことで、さまざまなリスクが分散されていきます。
それを個人に押しつけることが問題の根源です。今年の夏ごろの話ですので覚えている方も多いでしょうが、サントリーの会長を務め、同時に経済同友会の代表幹事を務めていた新浪剛史氏が、違法性のあるサンプリングを所持していたとして警察の捜査を受けたことがありました。この新浪氏はサントリーに行く前はローソンの社長を務めていました。元々は三菱商事の幹部だった人ですが、その方がローソンを立て直すためにやってきたのでした。
就任したての頃、新浪氏は「加盟店の声を聞く」ということでいろいろな対話を重ねていました。そして、加盟店オーナーの一番の要望だった「営業時間の短縮」について、加盟店側に配慮する考えを示していたのです。僕はそれを聞いたとき、「やっとまともな経営者がFC本部のトップに就く」と喜んだものです。
しかし、その考えは次第に言わなくなっていきました。当時、セブンイレブンのトップというより、コンビニ業界のトップと言っても過言ではなかった鈴木敏夫氏は否定的な意見を述べていました。新浪氏もコンビニの実情を知るにつれ、それは不可能だと思ったのかもしれません。しかし、ご存じのように、現在のコンビニはお店によって営業時間を短くすることが認められています。これは先ほど書きました「大阪のセブンイレブンの加盟店が裁判を起こしたこと」が影響していると、僕は思っています。
今後は人手不足になることが予想され、また働き方改革なども相まって、コンビニの契約内容も変わっていくでしょう。そうでなければ加盟店オーナーがいなくなるからです。こうして世の中は少しずつ変わっていくのですね。でも、50年かかっています。
じゃ、また。