<一面では>

pressココロ上




いやぁ、高市首相の米国訪問が無事に終わって、本当によかった、よかった。トランプ大統領への返答や対応を一つ間違えれば、日本がホルムズ海峡への艦船派遣へと追い込まれる可能性もありました。もちろん、日本には憲法の制約があり、それは不可能ですが、そうなると今度は日米関係が悪化します。最悪のケースを避けることができて、本当によかった、よかった。

トランプ大統領の発言は二転三転していました。14日には「日本や中国、フランス、英国、韓国による艦船派遣に期待」を示していましたが、15日夜には「もう要請しない」と怒りの投稿をしていました。僕はこのニュースを聞いて、あくまで個人的な想像ですが、「トランプさんが訪米してくる高市首相を気遣ったのではないか」と思いました。専門家でもない素人の僕の勝手な発想ですが、僕はそう思ったのです。

だって、考えてみてください。艦船派遣を要請されている状況でトランプ大統領と会談する高市首相の気持ち。相当なプレッシャーですよ。それを慮ったのではないかと思ったのです。正確に言うなら、トランプ大統領自身ではなく、「そうした気遣いの発言へと導く助言をした周囲のスタッフ」がいたのではないか、と僕は思っています。基本的にトランプ大統領は周囲に忖度するタイプではないからです。

執務室でのマスコミとの質疑の場面で、日本の記者から「なぜイラン攻撃の計画を同盟国に伝えなかったのか」と質問された際、日本の真珠湾攻撃を持ち出し、「不意打ちのことは、日本が一番よく知っているだろう」とジョーク交じりに答えていました。米国のマスコミからは「会談の場では不謹慎だ」と批判する声がありましたが、そうしたことを意に介さないのがトランプ大統領です。

そんな気質のトランプ大統領ですから、高市首相への気遣いを自らするとは思えません。周囲のスタッフの助言があったのではないか、と僕が思う理由です。それにしても、質問への答えとしてトランプ大統領が「真珠湾」を持ち出したときの高市首相のこわばった表情が印象的でした。「どうしてこの場でそんな質問をするのか」と怒っているようにも見えましたが、あの表情から察するに、高市首相は間違いなく困惑していました。

ちなみに、その質問をした記者についても各マスコミのニュースで取り上げられていました。テレビ朝日の政治部官邸キャップ、千々岩森生さんという記者でした。その千々岩記者がテレビ朝日の番組で質問の真意を語っていました。「アメリカが勝手に始めたものに、なぜ支援を求められなければいけないのか」という日本側のモヤモヤ感を伝えたかったそうです。

日本側としては、その疑問を持っている人は多いでしょうが、国際関係は本当に複雑です。表面的な対応だけでは通用しませんし、だからといって本音を口に出せばうまくいくわけでもありません。人間関係でも同様です。僕などは、つい本音を口にしてしまい、後悔することが多々ありました。本音を出しすぎると生きづらくなるのが世の中です。本音をそのまま出して生きていけるのは、大統領職にあるトランプ大統領だけです。

その「だけ」をうまく使ったのが高市首相でした。「世界を平和にできるのはドナルドだけ」とトランプ大統領を持ち上げていました。この発言にはさまざまな批判が上がっていますが、現実的に考えて、あれしか方法はなかったのではないでしょうか。評論家など第三者は好き勝手に言いますが、責任を負う立場にある人からすれば、それ以外に選択肢はなかったように思います。

思い出してください。高市首相が台湾侵攻について「存立危機事態と思う」と答弁したあとの対中関係です。単なる関係悪化にとどまらず、経済への影響も甚大でした。高市首相も就任間もない時期で、まだ首相という立場に十分慣れていなかったのでしょう。それまでの一政治家としての発言と、首相としての発言の影響の大きさを、十分に実感していなかったように思います。

そうしたことを踏まえますと、今回の高市首相の対応は、あれしか術はなかったのではないかと思いますし、首相としての役割をしっかり果たしたとも思います。高市首相を批判する人たちは、いったいどう対応すべきだったと考えているのでしょうか。先ほどの千々岩記者の質問に対するトランプ大統領の答えが、それを如実に物語っています。もし高市首相が少しでも批判めいた発言をしていたなら、混迷はさらに深まっていたに違いありません。

今回の訪米で、もっと評価されてよいのは外務官僚の尽力です。ここまでのお膳立てをしたのは、すべて外務官僚です。笑顔の作り方からハグの仕方に至るまで細かくアドバイスし、トランプ大統領への説得方法についても細心の注意を払って助言していたはずです。そうした裏方の努力には、もっと光が当たってもよいのではないでしょうか。同じことは自民党にも当てはまると思います。今回のような難局を乗り切れたのは、自民党だからこそだと思います。

実は僕は、先月の衆議院選挙では自民党が負けたほうがよいと思っていました。政治資金問題への対応や、保守寄りに傾きすぎていると感じていたからです。しかし、現在のような難しい国際局面に直面しますと、これを乗り切れるのは自民党しかないのではないかと感じたのが正直なところです。

茂木敏充外務大臣を見ていますと、その思いはさらに強くなりました。高市政権で外務大臣に就任したのは本人の希望とも言われていますが、茂木氏がその任に就いていて本当によかったと思います。実は人間性については、もちろん知り合いでも何でもないので本当のところはわかりませんが、テレビ越しに受ける印象はあまり好感の持てるものではありませんでした。しかし、現在の国際情勢を考えると、茂木氏が外務大臣でよかったと心から思っています。

そう思う一番の理由は、経験の豊富さです。国際関係は国家間の問題であり、政策が大きな要因になりますが、実際にやり取りをするのは人間です。人と人とが向き合う以上、言葉や文書だけでは伝わらない人間性も重要な要素になります。一般社会でも、上司や部下、同僚、取引先、顧客との関係において「相性」は大きな要因です。成績が優秀な人だけが評価されるわけではありませんし、相性の良い人が引き上げられることもあります。顧客との関係でも、価格の安さだけで選ばれるわけではなく、相性によっては高くても選ばれることがあります。

国際関係も同じです。初対面の相手よりも顔見知りの相手のほうが、胸襟を開いて話しやすいものです。そもそもトランプ大統領が日本を贔屓にしているのは、安倍元首相が好印象を与えたことに始まります。第一次政権時、各国の首脳が戸惑う中、真っ先に会いに行ったのが安倍首相でした。トランプ大統領はそれを忘れていません。その証拠に、安倍元首相の死後も昭恵夫人と会食しています。人間関係の重要性を示す一例です。

こう書くと、僕が安倍元首相を支持していたように思われるかもしれませんが、実は正反対です。集団的自衛権の進め方や森友学園問題での対応に疑問を持っていたからです。森友学園問題の発端は、当時の安倍首相が「自分や妻が関係していたら議員を辞職する」とまで言い切ったことでした。それを思うと、安倍首相を好きにはなれませんが、今回の局面では結果的に助けられたとも感じています。

人生は複雑ですね。簡単に割り切れないことばかりです。人の評価も一面的には決められませんし、時代によって評価が変わることもあります。

僕、妻の第一印象は嫌いだったんですよね。ツンケンしていて意地悪そうに見えたからです。そんな女性と縁あって結ばれ、40年以上続いています。人生って不思議ですよね。

じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする