<行動した責任>

pressココロ上




千葉県野田市立小4年の栗原心愛ちゃんが虐待されて亡くなった事件で母親の判決がありました。懲役2年6か月、執行猶予5年の判決に対してはいろいろな意見があるでしょうが、母親自身もDVを受けていたようですから、なんともやりきれない気持ちになります。

それを踏まえても母として子供を守ってやれなかった責任はあります。親は子供が一人で生きていけるまで育てる義務と責任があります。以前にも書いたことがありますが、僕は日曜夜7時半からNHKで放映されている「ダーウィンが来た!」を毎週見ています。動物の世界を見ていて本当に感心、感動するのは親の子どもに対する愛情の深さであり責任感です。

動物のすべての親は、全身全霊を傾けて子育てをしています。外敵が現れたときは、それこそ「命をかけて」子供を守っています。その光景を見るたびに、僕は親による虐待事件を思い出しています。

人間界が動物界と異なる点は弱者も生きていけることです。動物界のように徹底した弱肉強食の世界ではありません。動物の世界は、親が子供を育てることに強い責任感を持っていますが、ほかの動物に対しては冷徹なところがあります。

以前の猿の世界を取り上げた「ダーウィン」では、仲間ではない孤立した猿を徹底的にやっつける映像がありました。子供に対する愛情や責任感が強いのですから、その気持ちを「ほかの動物にも向ければいいのに」と思うのですが、その発想は人間特有のもののようです。

このように動物の世界では親の子に対する愛情が強いのですが、これはつまり愛情の基本が親子関係であることを示しているように思います。その意味で言いますと、親による虐待事件は、その基本ができていないことになりますから動物以下ということになります。そのような親元に生まれた子供が不憫でなりません。

また、千葉の事件は親だけではなく、周りの大人たちの無責任さも表面化させました。僕が今でも目に焼き付いているのは、心愛ちゃんが学校のアンケートに父親から暴力を受けていることを具体的に記入し、最後に「先生、どうにかなりませんか。」と書いている拙い文字です。僕は思い出すだけで胸が締め付けられます。

このアンケートには「ひみつをまもりますので、しょうじきにこたえてください」とまで書いてあったそうです。しかも、匿名を認めていたにもかかわらず、心愛ちゃんは氏名を記入していました。この文章の重みを担任や周りの先生方はどのように感じていたのでしょう。

もし、周りの先生方の一人でも教師という職業に対して真摯に向き合い責任を全うする気持ちを持っている大人であったなら、この事件は悲しい結果にはならなかったと思えて仕方ありません。

僕はこのコラムで幾度も書いていますが、人の命にかかわる仕事に就く人は自らの適性を考えるべきです。教師という職業は小さな命を育む大切な仕事です。単に「収入を得るための手段」と考えている人には就いてほしくないと思っています。仮に、上司からの指示であったとしても子供に対する責任がなくなるわけではありません。個人の行動の責任は個人にあります。

先週は、「仕事と責任」について考えさせられるニュースがあと一つありました。かんぽ生命保険が「契約者が不利益になる乗り換え契約を勧めていた」というニュースです。契約者が「不利益になる」を具体的に説明しますと、乗り換えたことによって「保険料が高く」なったり「保障額が少なく」なったりすることです。

では、「なぜ、かんぽの営業員が乗り換えを勧めていたか」と言いますと、営業の数字を上げるためです。契約者の状況など全く考慮することなく、自らの都合のみで契約者に勧めていたようです。

実は、僕も同じ経験を20年以上前にしています。当時は保険の知識が全くありませんでしたので簡単に騙されてしまいました。僕の場合、生命保険会社が乗り換えを勧めてきた理由は「利率が逆ザヤなった」からです。

もう少し詳しく説明します。
生命保険には種類が幾つかありますが、生命保険で問題が起こりやすいのは終身保険です。理由は、長期にわたる保障だからです。誰も将来のことなど予想することはできません。それを無理やり予想して作るのが終身生命保険です。

ざっくりと言ってしまいますと、生命保険は契約者から集めた保険料を運用して保険金の支払いに備えます。そして、その運用はあくまで予定でしかありません。ですから、時代の経済状況が変わると予定通りにいかないこともあります。例えば、運用利率を5%として作った保険が、時代の変化で実際は4%でしか運用できないこともあり得ます。そうなりますと「1%の逆ザヤ」が発生することになります。言うまでもなく「逆ザヤ」とは赤字のことです。

僕が加入していた保険はまさにそれだったのです。加入したときの予定利率を達成できなくなり、保険会社は保険の乗り換えを勧めてきたのでした。当時の僕は本来の目的など知る由もなく、言われるままに乗り換えてしまいました。もちろん、僕は乗り換えなどせずにそのまま継続していたほうが有利な保険に加入していられたことになります。

僕の場合は「逆ザヤの解消」が目的でしたが、今回のかんぽ生命の場合は「ノルマを達成するため」が目的だったようです。

また、同じ郵政グループのゆうちょ銀行が投資信託を不適切な方法で販売していたことも報道されました。基本的に、投資信託は名前が示すとおり投資ですので元本が減ることもあります。そうしたマイナス面を説明せずに販売していたようですが、僕からしますとオレオレ詐欺と変わらないように思えます。

しかし、僕がここで問題だと思うのは、不適切な営業を「ノルマのせいにしていること」です。まるで「会社からのノルマだから仕方ない」と弁明しているように聞こえます。この言葉からは、「会社の指示だから、自分たちには責任も罪もない」という発想が透けて見えます。

ちょっと待ってください。もし、会社から「殺人をしろ」という指示がきたときも従うのでしょうか。そんなことはないはずです。犯罪に手を染めることになるのですから、指示になど従わないはずです。

保険や投資信託の販売も同じです。自分の業務内容に疑問を感じたときは上司や会社の指示に従わないのが社会人です。「ノルマだった」と言えば責任逃れができると思っているような報道には違和感を覚えずにはいられません。

会社の命令であろうが、上司の指示であろうが、行動をするのは自分です。そして、自分の行動は自分で決めることができます。もし、世界中の個人個人が自分の意志で行動することを選ぶなら世界から戦争がなくなると思うのは僕だけでしょうか。

じゃ、また。







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