<取り調べ>

pressココロ上




前にも書きましたが、NHK「映像の世紀バタフライ」は本当に面白いです。リアルタイムでは見られませんので、いつも「NHKプラス」であとから見ているのですが、前回は「ナチ親衛隊 狂気の実行者たち」が放映されていました。そういう映像を見るたびに思うのですが、どうしてそういう政権が生まれたのか、本当に不思議で不思議でなりません。幾度も書いていますが、ナチス政権は「選挙」で選ばれて誕生しています。

最近はそうしたことに関連するニュースについつい興味を持ってしまうのですが、米国でトランプ大統領が選ばれた背景についても同様の気持ちを感じています。トランプ氏のセクハラをスクープした記者は、確か女性2人だったと思いますが、その記者が「犯罪を犯した人が選挙で選ばれたことが不思議」と語っていました。昔でしたら、やはり選ばれなかったように思います。

8年前、初めてトランプ大統領が誕生したあと、ニュースでしきりに報じていたのが、「SNSの果たした影響が大きかった」ということでした。確かに、今でいう「フェイクが拡散した」のも事実でしょうが、今回の当選を見ていますと、単に「フェイクが拡散した」だけではなく、大衆の心を掴むことに長けていたのは間違いないようです。

民主党の予備選に立候補したこともあるバーニー・サンダース上院議員が民主党候補・ハリス氏の敗因について「労働者階級を見捨てた民主党」と批判していました。前々回の「映像の世紀……」では「ラストベルト アメリカ 忘れられた人々」を放映していたのですが、サンダース議員の指摘が当たっているように思いました。

欧州に目を転じますと、各国で極右政党が躍進しています。先日のニュースで読んだのはナチスを生んだドイツに関してでしたが、ドイツはナチスを生んだ反省から、戦後ずっとナチスを生みそうな土壌を排除したり、芽を摘む政策や活動に力を入れきました。しかし、そのドイツでさえ極右政党が支持を集めています。先の戦争が終わってから80年ですが、少しずつ感性が鈍くなっているのかもしれません。

「ローマ人の物語」の著者である塩野七生さんが「食が満たされてから政治」というようなことを書いているのを読んだ記憶があります。米国にしろ欧州にしろ極端な政策を掲げる政党が躍進している国、もしくは地域で暮らしている人たちは生活に困窮していることが共通しています。自分のこととして考えてみますと、それも当然のことのように思います。

日本に目を移しますと、先の選挙で国民民主党が躍進したのもまさに経済でした。「103万円の壁」に焦点を絞って選挙運動をしたことが投票者の琴線に触れたことは間違いありません。それまで投票しなかった若い人たちが投票に行ったことも大きな勝因です。こうした現象も「政治の前に経済」の一つのあらわれです。

そうは言いつつも、年を重ねた僕からしますと「政治の前に経済」とばかりもいえないと思っています。なぜなら経済を決めたり動かしたりする、その土台になるものが政治だからです。国民民主党が躍進したのも政治がきちんと機能しているからこそです。お隣の韓国でも、大統領が「戒厳令」を発令して、すぐに解除したのは政治が機能していたからです。もし、政治が機能していなかったなら、あのまま独裁政治が進んでいたかもしれません。

とは言いつつも、僕は基本的には尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を支持しています。野党が政権をとったなら日本に厳しい態度をとるのは目に見えていますし、北朝鮮に近い政権では不安な気持ちになってしまいます。韓国はまだ落ち着く気配がありませんが、日韓関係が悪くならないことを願っています。

韓国と聞いて僕が真っ先に思うのは、「大統領を退任したあとに逮捕される姿」です。きちんと調べたわけではありませんが、韓国では退任した大統領の多くが逮捕されたりなど悲惨な状況になっています。政権が変わるたびに警察や検察の考え方が変わることが理由なのかもしれませんが、退任したあとに逮捕されるのでは、安心して大統領を務めることもできません。そうした社会はやはり問題です。

先週、不動産会社の社長が関係する事件での、検察が取り調べをする様子が公開されました。この社長は横領事件で大阪地検特捜部に逮捕・起訴された後、刑事裁判で無罪となったのですが、この映像は社長の部下に対する取り調べの様子を録画したものでした。マスコミでは「なめるんじゃねえよ」などという暴言や机を強くたたく様子を大きく報じていますが、僕の感想としては、ところどころに「丁寧語」も入れていたりして、想像していたほどの厳しく激しい取り調べという印象は受けませんでした。

このように書きますと、僕が検察の味方のように思うかもしれませんが、僕の気持ちは「マスコミの報じ方に違和感と持った」というだけで、検察の取り調べのやり方には強い憤りを感じています。以前、リクルート事件で逮捕された江副浩正さんの手記を読んだことがありますが、その中に取り調べの様子も描かれていました。「壁数十センチ前に長時間立たされた」などと書いてありましたが、普段行われている取り調べは公開された映像よりもっと厳しいやり方と推測しています。

そもそも「人質司法」という言葉があるくらい、司法制度は絶対的に警察・検察が有利な制度になっています。「被疑者を人質にできる」のですから、検察のほうが圧倒的に有利に決まっています。そのような状況で、取り調べが密室で行われていては公平な取り調べができるはずがありません。

先ほどの事件で無罪判決を受けた社長が会見で話していましたが、検察は「自分の見立ての通りに話して」初めて正直に話したことにするそうです。これが冤罪を生む要因です。最初から結論を決めていて、それに沿って証言するまで問い詰めるのですから正しい証言が得られるはずがありません。

憶えている方も多いでしょうが、先月袴田事件でえん罪が確定しました。この事件では映像こそありませんでしたが、取り調べ時の録音が残っていました。それもニュースで報じられていましたが、誰が聞いても「無理やりな取り調べ」でした。このようなやり方がまかり通っていることが不思議でなりません。

ドラマなどでは検察は「正義の味方」であることが多いのですが、正義の味方になるためには真実を見つけることが最重要です。真実がわからなければ「正義」もなにもあったものではありません。そして、真実を見つけるために必要なことが「公平な取り調べ」です。検察が見立てたとおりの供述ではなく、本当の供述を得ることです。圧迫取り調べで本当の供述が得られるとは思えません。

ネットで調べますと、取り調べの可視化は2019年から施行されたようですが、対象となる事件は全事件からしますとわずか3%未満だそうです。おそらく検察側が反対しているのだろうと推測しますが、検察の方々はなにも疑問は感じないのでしょうか。

先月、検察の方が袴田巌さん宅に謝罪に出向いているニュースがありましたが、こうした事件があるにもかかわらず、検察の方々が司法制度を改善しようとしないのが不思議です。人質司法もそうですし、取り調べの可視化もそうです。公平な取り調べが行われる社会になることを願ってやみません。

だれでも、いつ容疑者になるとも限らないのですから。

じゃ、また。




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