とうとう衆議院が解散されました。テレビでそのときの様子を見ましたが、万歳している議員はそれほど多くありませんでした。やはり今の時期の総選挙は「適当ではない」と多くの議員も思っているのでしょう。受験生にとっては勉強の妨げになったり、最悪の場合は試験日と重なることもあるかもしれません。日本海側では大雪で生活するだけで精一杯で、選挙どころではない地域もあるのではないでしょうか。そもそも投票に行くことが「大変」を超えて「困難」な場合もあるはずです。
それでも解散したのは、やはり高市首相の個人的都合と言われても仕方ないように思います。しかし、ここであまり高市批判をしますと、偏ったコラムになりますので控えますが、そうした疑念は深まるばかりです。
選挙になると必ず出てくるのが「減税の主張」です。僕などは、候補者が「減税を訴えれば票が得られる」と思っているように感じられ、あまりいい気持ちにはなりません。昔から言われていますが、喜んで税金を納める人はいません。余程の大金持ちで公徳心の高い人でない限り、税金はできるだけ少なく納めようと考えるものです。
松下電器(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏は、かつて「無税国家論」を唱えていました。そうした発想は昔からありましたが、実行に移すのは困難なようです。あれから50年以上が経っていますが、実現していないどころか、財政赤字は膨れ上がっています。
そうなんです。財政赤字が膨れ上がっているのです。それにもかかわらず、ほとんどの政党・候補者が公約として「減税」を掲げています。「減税」を掲げていないのは「チームみらい」の安野貴博党首だけです。僕はこれが不思議で不思議でなりません。もう一度付け足しましょう。とても不思議でなりません。
2025年度(令和7年度)の日本の財政は、約4分の1が国債発行で賄われています。つまり、支出に対して収入が足りていないのです。そのような状況で、どうして減税などできるのでしょうか。高市首相は首相就任時に「責任ある積極財政」と語っていましたが、補正予算の内容を見ていますと、「責任ある」とはとうてい思えませんでした。
これは自民党に限った話ではありません。ほかの政党・政治家も同様で、今の財政状況でいったいどうやって「減税」の財源を確保するのでしょうか。今回、立憲民主党と公明党が新たに立ち上げた「中道改革連合」も「食料品の消費税をゼロ(撤廃)にする」と掲げ、しかも「恒久化を目指す」とまで言っています。
問題はその財源です。僕がテレビで見た映像では、共同代表の斎藤氏が「赤字国債に頼らず、国の資産を活用した政府系ファンドの運用益などに充てる」と語っていました。僕は思わず「え?」と思いました。ファンドとは投資のことです。言うまでもなく投資は利益を出すこともありますが、反対に損失を出すこともあります。そのようなものを財源にして、もし損失が出たとき、財源はいったいどうなるのでしょうか。テレビではカットされたのかもしれませんが、それを追及するマスコミの人はいなかったのでしょうか。それが不思議で不思議でなりません。もう1回つけくわえて、不思議でなりません。
実は、先ほど書きました松下氏の「無税国家論」にも、似たような論調がありました。ですが、そのような不確かなものを財源にするのは、あまりにも無謀です。ここ数年、iDeCo(個人型確定拠出年金)が注目を集めました。この制度自体はかなり前からあったそうですが、僕が本屋で目に付くようになったのは一昨年あたりからでしょうか。
この制度ができたとき、僕が真っ先に気になったのは名称でした。「拠出」となっていますが、それ以前は「確定給付年金」という制度が主流だったからです。単純に、「給付」は必ずもらえて、「拠出」は損をすることもある、という覚え方をしていました。
僕も詳しいわけではありませんが、生成AIの力を借りながらざっくりと説明しますと、「給付型」は「将来もらえる年金額」を会社が約束する年金制度です。その前に大まかな括りを説明しますと、年金制度は「公的」と「私的」に分かれています。「公的」はよく知られている国民年金と厚生年金です。そして「私的」には「厚生年金基金」「適格退職年金」「確定給付企業年金」があります。今説明しているのは「確定給付企業年金」です。
「私的」ということは、企業が独自に設けた制度ということになりますが、なぜ設けたかと言えば、従業員に報いるためです。そのため、すべての企業にある制度ではなく、ある程度の企業規模以上の企業に限られます。当然、中小企業の中には「私的年金」制度がないところもあります。
話を「確定給付年金」に絞りますと、企業は将来の年金支払いに備えて資金を運用していました。ところが、その運用がうまくいかなくなり、約束した年金を支払えなくなるケースが出てきました。そうなるとどうなるか。企業が足りなくなった分を補填していたのです。もちろん、補填する義務があったからですが、企業にとってそれは大きなリスクでした。「確定拠出年金」が生まれた背景には、こうした運用の難しさがあったのです。それほど運用というのは難しいものなのです。
それにもかかわらず、「中道改革連合」の斎藤氏は「ファンドを財源にする」と説明していました。誰も不安は感じないのでしょうか。僕は不安で不安で仕方ありません。個人が金融商品の運用に失敗するのとはわけが違います。財政として国民のために使わなければならないお金を失うかもしれないのです。テレビCMでも小さく表示されていますが、「金融商品は損失を出すこともある」のです。
不安を感じるのは「中道改革連合」だけではありません。ほかの党にしても、きちんと減税の財源を明確にする義務があると思います。社会保険料の引き下げを訴えている政党もありますが、社会保険料については少し問題提起したいことがあります。岸田政権時のことですが、児童手当や子育て支援の費用を、税金ではなく社会保険料の上乗せで賄う仕組みの導入が決まりました。僕からしますと、これは非常にずる賢いやり方に思え、納得できるものではありません。実際に上乗せされるのはまだ先だそうですが、是非ともこれはなくなってほしいものです。
現在の赤字国債の残高は1300兆円ともいわれています。天文学的な数字です。この上にさらに赤字国債を発行しようとしているのですから、何をかいわんやです。最近の政治では、リフレ派とかMMT理論とか難しい言葉を度々耳にしますが、正直、素人の僕にはよく分かりません。ただ、国債残高が1000兆円を超えているという事実だけで、さすがに心配になります。いったい誰を、何を信用すればいいのでしょうか。
もう再来週は投票日ですが、皆さんが何を基準に投票先を決めるのかに興味があります。それ以前に、投票率がどれくらいになるのかも心配です。僕はいろいろな意見の人がいるのは当然だと思っていますが、投票しない人を無責任だと思っています。投票する際はきちんと調べるのが基本ですが、その際には主張の裏付けまでしっかりと調べてほしいです。例えば「減税する」と言っていても、その裏付けとなる財源の確かさまで確認したうえで投票してほしいのです。口先だけの人気取りに騙されないよう、くれぐれもお願いしたいです。
僕なんて、プロポーズの言葉は「幸せにできないかもしれないけど……」と正直に伝えていましたから。
じゃ、また。