<鬼滅の刃>

pressココロ上




「鬼滅の刃」がエンタメ業界を席捲していますが、僕はメディアで取り上げられた当初はさほど興味も沸きませんでした。僕はおじさんと言っても、十分過ぎるほどのおじさんですので、漫画とかアニメには全く興味を感じません。最後に漫画・アニメに興味を持ったのは「ドラゴンボール」です。「ONE PIECE」も「NARUTO」も真剣に読んだことはありません。

ですので、「鬼滅の刃」の快進撃について、話には聞いていても「へぇ~、そうなんだ」という程度の反応しかしませんでした。ところが、これまでの映画史上で史上最速の100億円突破とか、コミックランキングで1位から10位を独占とか、主題歌もランキングで1位などと聞きますとさすがに興味が湧いてきました。

さらに、原作は少年ジャンプだそうですが、「すでに終了している」、さらにさらに吾峠 呼世晴なる作者が女性で「プロフィールが一切公表されていない」といった漫画を取り巻く状況も僕の興味をそそりました。

そんなときに「鬼滅の刃」がアマゾンプライムで放映されていました。僕は毎週1回以上アマゾンプライムを見ているのですが、いつからかは覚えていませんが、少なくともここ1ヶ月は「鬼滅の刃」をトップ画面で紹介していました。しかし、冒頭で書きましたように興味がありませんでしたのでスルーしていました。ですが、先週は普段とは違い「観たい」気持ちが起こりました。

一般の映画ですと、おおよそ2時間と観る時間の見当がつきますが、アマゾンプライムの「鬼滅の刃」はテレビ番組を放映しているものです。ですので、物語の最初から観ることができ、わかりやすいのですが、全話を観るのには躊躇するものがありました。何時間もパソコンの前に座っているわけにはいかなかったからです。ということで、エピソード8話で終了したのですが、そこまででも十分魅力が伝わってきました。

感想を一言で言いますと「ドラゴンボールみたい」です。登場人物が戦うときの動きや表情、またところどころに出てくるギャグ的な要素はこの漫画を単なる「お涙頂戴」や「感動物語」にしていないところが好感です。そういったところが「ドラゴンボール」に似ている、と感じた理由です。

漫画やアニメにギャグ的要素を入れるのは「ドラゴンボール」にはじまったことではありません。僕が最初に、普通の漫画の中にギャグの面白さを入れていることを意識したのは「キン肉マン」でした。ときに真面目なスポ根物語になり、ときにドリフターズのようなギャグになる「キン肉マン」を尊敬していました。

僕が小さい頃に見た漫画は「あしたのジョー」や「巨人の星」です。ですが、これらは漫画というよりは劇画に近かったように思います。話の中にギャグ的要素が入ってくることは絶対になく、主人公がただただストイックに生きる姿が描かれていました。

僕は昭和の人間でスポーツ大好き少年でしたので、「あしたのジョー」や「巨人の星」の影響を少なからず受けています。「根性」とか「努力」といったいわゆる「スポ根」漫画に憧れていましたが、年を重ねるに従い、真面目だけではなくどこかにおどけた部分も持っている必要性を感じるようになりました。そうしたことを教えてくれたのが、「キン肉マン」などの、話のどこかにギャグを入れている漫画でした。

先に、「鬼滅の刃」の作者はプロフィールを一切公表していないと書きましたが、そうした生き方にも好感です。ネット情報によりますと、現在は漫画を発表していないようですが、下衆な話をしますと、今回の大ヒットで莫大な収入を得ることは間違いありません。これほど成功しますと、表に出たくなるのが人間の心情だと思いますが、それでも一切表に出てこないのは好感です。

漫画家を目指す若者と言いますと、僕には思い出す人がいます。もう今から10年くらい前ですが、コロッケ店を営んでいたときによく買いに来てくれていた青年です。20代前半の方でしたが、少年ジャンプで奨励賞的な賞をとって状況してきた若者でした。定期的に買いに来てくれていたのですが、少しずつお話をするようになり、漫画家を目指していることを知りました。

賞をとった漫画も見せてくれましたが、ネットにも載っていました。彼の話では、売れっ子漫画家さんのアシスタントもやっていたそうですが、僕のお店にやってくるようになったときには、マックでバイトをしていました。アシスタントだけでは中々思うように生活できないようでした。

一度彼女を連れて来たこともありましたが、現代風のかわいらしい顔立ちの女性でした。結局、デビューすることはありませんでしたので、地元に帰ったのではないでしょうか。僕は今、noteというサイトをよく見ているのですが、そのサイトには漫画家さんとは編集者の方が数多く投稿しています。

こんなに世の中には漫画家さんがいるんだなぁ、というのが実感ですが、それだけの人数の中で売れるのは大変です。しかし、時代は少しずつ変わってきています。これまでは「売れる」とは少年誌に掲載されることが第一関門で、それをクリアしたうえに人気が出る必要があります。

いろいろな情報を読みますと、漫画家さんが成功するには連載されるだけでは難しくて、連載されたものが人気を博しコミック版になって初めて多額の収入を得られるそうです。「売れる」には関門が2つ以上あるようです。僕が知り合った青年のように、第一関門を突破できない人のほうが多いのが現実です。

しかも現在の雑誌を取り巻く状況からしますと、昔のように売れっ子作家さん予備軍をサポートすることも難しいようです。昔は、売れる前の若い子たちにお給料のようなものがいくばくか支払われていたそうです。連載を持たない若い漫画家の卵は収入がないのですからそうしたサポートは必要です。

ですが、先ほど書きましたように出版会社自体がそうした余裕がないのが今の時代です。若い漫画家さんが生きていけない世の中になっています。しかし、外野から見ていますと、そうした状況を改善しようという気概が今の編集者の人たちにないように見えます。僕はそれが不快です。若い人たち(漫画家の卵さん)が世の中のことをあまり知らないことに胡坐をかいているように感じます。

noteに投稿している漫画家さんの卵の話を読みますと、必死に描いた漫画を編集者さんに持って行っても単に「書き直し」を言われるだけ、ということもあるようです。漫画家さんの生活を知っている編集者さんなら、「書き直し」をすることが単なる時間の浪費になることも理解できるはずです。もし、真剣に漫画家さんの将来や生活のことを思うなら、ほかの対応も考えるべきです。

数か月前まで、「生きている限りかすり傷」と豪語していた編集者さんがいましたが、最近は編集者さんの質が落ちているのかもしれません。経営の世界に置き換えますと、下請けのことも配慮しながら取引をするのが大企業の社会的責任です。編集者と漫画家の関係はまさしく親会社と下請けの関係です。出版社もそうした意識を持つべきだと思います。

その意味で言いますと、編集者の漫画家さんに対する対応の仕方はとても重要になってきます。会社が社会的責任を持たないとしても、直接漫画家さんと接する編集者は個人の範囲で漫画家さんをサポートする・育てることができる立場にいます。これはあくまで僕の想像ですが、「鬼滅の刃」は漫画家さんの立場を慮ることができる編集者さんだったのではないか、と思っています。

一切プロフィールを公表しないとか、登場人物の名前の付け方とか、今現在漫画を描いていない、ことなどを見ていますと、編集者の方の素晴らしさが感じられます。「鬼滅の刃」の快進撃がどこまで続くのか楽しみです。

じゃ、また。




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