<プロの目利き力>

pressココロ上




先週は大規模な自然災害が2つも起きました。関西地方を襲った台風21号は強風のすさまじさを見せつけましたし、北海道の地震では頑丈そうに見える大地がいとも簡単に崩れることを教えられました。やはり自然の脅威は人間の想像を超えたものがあります。
このような災害が起こるたびに、海外からは整然と店の前に行列を作っている国民性を評価する声が聞こえてきます。ほかの国では略奪や暴動が起きても不思議ではないそうで、真面目で実直な日本人資質が賞賛されています。
このような映像を見るたびに日本に生まれてよかったと実感しますが、そうしたこととは別に、ニュースの映像を見ていますとスマホのカメラ機能の高さを感じます。台風での災害では大きなトラックが強風で横倒しになる様子やビルの屋根が吹き飛ばされる強烈さはスマホならではの映像です。現場で実際に体験しているからこそ伝えられる臨場感がありました。
スマホが登場する前は、事故現場などの映像はマスコミの人が撮影するしか方法はありませんでした。ですが、実際問題としてマスコミの人が駆け付けたときは最も厳しい状況が終わったあとです。映像で最も強いインパクトを伝えるのは最も激しい状況の映像です。その意味で言いますと、マスコミの人が伝える厳しさのピークを過ぎた映像はインパクトがある映像とはいえません。それに比べますと、厳しい状況の現場で撮影しているスマホの映像には敵いません。速報性と衝撃性の観点で考えますと、スマホの登場はとても大きなものがありました。
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僕はおじさんですのでSNSというのはあまり得意ではありません。というよりもあまり好きではありません。ですので、ツイッターもfacebookもアカウントは持っていますが、今一つ使い切れていない部分があります。特にツイッターに関しては「どうして、いちいちつぶやかなくちゃいけないんだ」という思いがあります。
このようなひねくれた性格ですのでSNSの世界に疎いのですが、数ヶ月前にたまたま僕の知らない世界に触れる機会がありました。そこで知ったのが「はあちゅうさん」とか「かっぴーさん」とか「イケダハヤトさん」といった方々ですが、僕が知らなかっただけでネットの世界では著名人のようでした。本当に世の中には自分の知らないことがまだまだたくさんあるものだと実感した次第です。
時を同じくして知ったことがツイッターの有用性です。僕はツイッターは単なるつぶやきツールと思っていましたが、今の時代はツイッターは広告宣伝またはマーケティングに欠かせないツールとなっているようでした。そうなのです。宣伝に長けている人たちはツイッターを使って自分というブランドを確立または拡散しています。
その流れの延長で知ったのが、今出版業界を席捲している若い編集者でした。箕輪 厚介さんと言う方ですが、出版業界または若いネット利用者の間では有名人だそうです。有名になった理由はヒット作を連発しているからですが、与沢翼『ネオヒルズジャパン』や堀江貴文『多動力』、見城徹『たった一人の熱狂』などがあります。また、箕輪サロンという集まりも有名だそうです。
箕輪さんの言葉で印象に残る言葉が「熱量がある」という表現ですが、売りたいという強い気持ちが本を作る際には一番重要なようです。箕輪さんは以前は双葉社にいましたが、現在は幻冬舎に在籍しています。箕輪さんのインタビューを幾つか読みましたが、箕輪さんを見ていますと、若い頃の見城徹氏に似ている印象を受けました。わざわざ言う必要もないでしょうが、見城氏は幻冬舎の社長さんです。
お二人に共通しているのは売れそうな雰囲気を察知する感性です。そして、おそらく編集者という職業にはこの感性が最も大切なのでしょう。
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僕が子供の頃は、ほとんどの小学校に二宮金次郎さんが背中に薪を背負って本を読みながら立っていました。二宮さんは勤勉の象徴的存在ですが、僕は大人になってから二宮さんのほかの面を知ることになりました。なにかの人生指南本だったと思いますが、
「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」
という箴言に出会いました。
この箴言に出会ったのは僕が独立してラーメン店を営んでいたときでそこそこ儲かっていたときです。当時は、グルメ番組が隆盛で実際の現場とテレビの伝える内容があまりに違っていることに憤りを感じていました。飲食店の浮沈がテレビ業界に影響されていることが納得できなかったのです。「売れさえすれば、どんな方法でも構わない」という風潮がまかり通っていたことに我慢がなりませんでした。
その頃の僕は「売上げよりも、売り方が重要だ」と考えるようになっていました。つまり、正々堂々と売ることにこだわりを持っていました。事実を誇張したり消費者を惑わすような宣伝方法で売上げを作るのは間違いだと思っていました。そのときに出会ったのが「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」でした。
どんなにきれいごとを並べて、格好いいことを言っていても赤字経営をしていてはなんの意味もありません。会社員でしたら毎月決まったお給料がもらえますが、自営業者は赤字では生活ができません。僕は十数年後に廃業することになるのですが、この言葉の厳しさを嫌というほど味わいました。
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テレビ業界ですとプロデューサー、出版業界ですと編集者になりますが、こういった人たちは世の中に伝えたいことを出力する権限を持っています。インターネットの登場で誰でも情報発信ができるとは言われますが、多くの人の目に触れるという意味ではプロデューサーや編集者の立場の方はやはり圧倒的に強いものがあります。
こうした状況の中で、世の中へ作品を出品する権限を持っているプロデューサーや編集者の方々には社会的責任があるはずです。社会に貢献する本を送り出すという責任です。一般の人が情報を発信することとプロと言われるプロデューサーや編集者が情報を発信することの一番の違いは作品を評価する目利き力です。
もちろん「経済なき道徳は寝言」ですから、赤字になっては意味がありませんが、経済だけを追い求めて作品を選ぶのは間違っています。プロデューサーまたは編集者という仕事は社会に与える影響が大きいですが、だからこそ仕事に対する責任も大きくなるはずです。
一般の方が映したスマホの映像がテレビで放映されるのを見ていて感じたことでした。
じゃ、また。




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