<企業間格差>

pressココロ上




自民党の新総裁に、高市早苗前経済安全保障担当大臣が選出されました。僕としては、林芳正官房長官が最適だと思っていましたが、結果は3位でした。終盤に入ってからは、林官房長官が「伸びている」との報道もありましたが、最近のマスコミ報道はあまり当てになりません。記者の方々が、自分なりの肌感覚で想像したことをそのまま報道しているように思えます。

新聞の発行部数が激減しているのはよく知られています。その理由としてITの伸長が挙げられるのはもちろんですが、新聞業界自体にも問題があると僕は思っています。この点についてはこれまで何度も書いていますので、ここでは深掘りはしませんが、新聞業界の未来は決して明るくないと感じています。

ITの伸長を具体的に説明しますと、インターネット上のニュースまとめサイトやSNSなどが、新聞社の記事を引用・再配信していることです。記者たちが日夜取材して書いた記事を、無断で使われるのは新聞社にとってはたまったものではありません。それは確かですが、一方で新聞というメディア自体が、今の時代にそぐわなくなっていることも事実です。

速報性という面ではテレビやネットに敵いませんし、映像の面でも同様です。ネットは速報性や映像面では優れていますが、自ら記事を書くわけではなく、あくまで他社の記事を引用するだけです。いわば「他人の褌で相撲を取っている」状態です。しかし、新聞が衰退すれば情報源自体が減るため、いずれネット企業も対策を取るはずです。例えば、新聞社に一定の金額を支払う、あるいは自ら記事を制作する下請け企業を立ち上げるといった形です。いずれにしても、新聞業界の衰退は避けられないでしょう。

僕がたびたび書いている経営学者ドラッカー氏の言葉、「変化はコントロールできない。できるのは変化の先頭に立つことだけだ」にならうなら、新たな「記事制作の業態」が生まれてくるはずです。先ほど「記事を書く下請け企業」と述べましたが、今の新聞業界は、ネットの登場によって自動的に「下請け企業」の立場に追いやられてしまっています。これこそが衰退の最大の要因です。

下請け企業の最大の問題は、親会社の言いなりになるしかないことです。「下請け企業」と聞きますと、企業群の縦系列を思い浮かべるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。縦系列に属していなくても、実質的に下請けになっている企業は多数あります。取引先が大企業であれば、その可能性は高まります。

「下請け企業」という言葉から自然に「中小企業」を連想する人も多いでしょう。実際、日本では中小企業の割合は9割以上を占めています。つまり、ほとんどの企業が下請け企業としての立場を経験していることになります。

先日、「男性の育休取得率が全国で初の4割越え」という記事を読みました。女性はもちろん、男性でも育休を取得する人が少しずつ増えている印象があります。ただし、あくまで「少しずつ」です。なぜなら、日本の企業のほとんどは中小企業だからです。こうした記事を目にすると、僕はどうしても「企業間格差」に思いが至ります。

頭に思い浮かぶのは、「育休を取った人の代わりに出勤した人がいるはずだ」ということです。企業は売上と利益がなければ存続できません。したがって、育休に限らず誰かが有給休暇を取れば、その穴を埋めるために別の誰かが出勤せざるを得ません。もし「代わりが必要ない」仕事であれば、そもそもその業務は不要ということになりますし、それが必要な業務なら、人員が「もともと過剰」だったということになります。

利益を上げなくてもよい組織であれば話は別です。倒産の心配がありませんので、有給も育休も気兼ねなく取得できます。ときどき、役所など公務員が育休を取得したという記事を目にしますが、僕は正直、違和感を覚えます。倒産の心配がないため、何の気兼ねもなく休暇が取れるからです。その結果、人員不足による「サービスの劣化」は、住民へのしわ寄せとなります。

このように、利益を生み出す必要のない公的機関では育休や有給の取得が容易ですが、民間企業ではそう簡単ではありません。多くの企業はギリギリの人員で業務を回しているため、「有給」を与える余裕は限られています。

僕がラーメン店を営んでいた40年ほど前、有給休暇の取得奨励がマスコミで報じられるようになっていました。ある日、開業当初から働いてくれていたパートさんが「私も有給、取れるのかしら?」と聞いてきました。突然の質問に僕は思わず「えっ?」とだけ答えました。僕のうろたえを察したのか、その方はそれ以上突っ込んできませんでした。

個人商店の場合、「ギリギリ」を超えて「グリグリ」で仕事を回しているようなものです。有給を取られてしまいますと、大げさではなく店が立ち行かなくなります。仮に代わりの人を補充できたとしても、有給中のパートさんには給与を支払わなければなりません。これは大きな負担です。有給の報道を耳にするたび、この出来事を思い出します。

僕のような個人商店に限らず、中小企業も事情は似ています。有給とは、企業からすれば人件費の増加を意味します。僕はマスコミで有給や育休の報道を見るたび、その負担が下請け企業や取引先にしわ寄せされているのではないか、と考えてしまいます。

先日、ある企業が「有給奨励金制度」を導入したという記事を読みました。社員が有給休暇を取得した際、その業務をサポートした「周囲の社員に奨励金を支払う制度」です。ここまで仕組みが整っていれば社内の人間関係もこじれないでしょうが、そこまでできる企業は少数です。多くの企業にとって、有給は頭の痛い問題です。

もちろん、有給や育休が取得できる企業は素晴らしく、そこで働く人々の満足度も高いでしょう。だからこそ、そうした環境を享受できる人々には、その裏側にある周囲の負担にも思いを巡らせてほしいと思います。

同じ構図を含むのが「お子持ち様」問題です。子どもを持つ従業員と、そうでない従業員との待遇格差が生む軋轢です。確かに、「子どもを持つことを特権」のように振る舞う人がいれば、持たない側が不公平感を抱くのは当然です。残業が偏れば、最初は我慢できても、積み重なれば不満がたまります。これも、先述の有給奨励金制度のように、サポートする側への細やかな配慮で改善できるはずです。

繰り返しになりますが、こうした改善ができるのは、それなりの規模の企業に限られてきます。もちろん、そうした企業になるためにはそれ相応の努力をした結果だと理解していますが、それでも下請けの企業にも恩恵が行きわたるように、みんなで考えてほしいのです。

かつて、トヨタは「乾いたぞうきんを絞る」と言われるほど経費節減に臨んでいました。そうした努力が実って今の「世界のトヨタ」があるわけですが、僕は「絞られたぞうきん」の行方が気になって仕方ありませんでした。

僕って、甘いのかな……。

じゃ、また。

校正:chatGPT




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